クラシックの開幕戦となる桜花賞が今週末、阪神競馬場で開催される。今年の注目は、何と言っても2歳女王の
ソウルスターリング(牝3歳、美浦・藤沢和雄厩舎)だろう。始動戦となったチューリップ賞を、2馬身差の危なげない内容で勝利。現在、4戦4勝の無敗で、世代最強牝馬の呼び声は高い。
同馬の父
フランケルは、現役時代に14戦無敗でG1・10勝を挙げ、“怪物”と称された。競走馬としての能力に加え、既に種牡馬としてもかなりの可能性を感じさせる存在。以前、弊紙の東京本紙担当・小林記者が藤沢和雄調教師の
フランケルへの見解を記していて非常に興味深かったので、今回は栗東の関係者を取材することにした。
11年セントジェームズパレスSで
グランプリボス(9頭立て8着)に騎乗し、対戦経験を持つM・デムーロ騎手に聞くと、「強かった。素晴らしい馬だった」と絶賛。「
グランプリボスもいい馬だったけど、
フランケルは全然違っていた」と、傑出した能力に驚くしかなかったという。
担当だった矢作芳人厩舎の久保公二助手は「ゼッケン番号が
フランケルのすぐ後ろ(5番)やったから、どんな馬かなと思っていたけど、正直、普通のきれいな馬って感じやった。見た目なら
グッドババや
エイブルフレンド(※)の方が印象深い」と率直な印象を語る。一方、その走りには「前の方にいたボスを並ぶ間もなくかわしたんだから強い。千六でも二千でもあれだけ走るからすごいよね」と舌を巻いていた。
同助手とは「(
フランケルの父)
ガリレオの子は日本では走ってないのに、なんで
フランケルの子は走るんだろう」という話題にもなった。前者の産駒は日本では重賞未勝利だが、後者は16年ファンタジーSを制した
ミスエルテを含め、初年度からいきなり結果を出した。何が違うのか?その疑問を解くヒントが、
ミスエルテを管理する池江泰寿調教師の言葉の中にあった。
「デインヒルから来ているんでしょう。
フランケルは馬格を見ても、デインヒルが色濃く出ていますから」
デインヒルは米国産の競走馬で、種牡馬としても多くの活躍馬を世に送り出した。日本でも02年秋華賞&エリザベス女王杯を制した
ファインモーションを輩出。
フランケルの母カインドは同馬の産駒で、その“血の力”が成功の要因だと指摘する。「デインヒルは
スピードもあって世界中で成功している。そういう適応能力の高さが
フランケルにもあるよね。日本の軽い馬場なら、2400メートルをこなす産駒も出てくると思う」と分析していた。
桜花賞に出走する2頭を含め、
フランケル産駒が、これから世界中でどのような走りをするのか、興味は尽きない。レベルが高いと評される現3歳牝馬世代。世界的な遺伝子の力が証明されるのか?新たな力の台頭があるのか?今週末は、各馬の血統にも注目しつつ、若き乙女たちの白熱した戦いを見届けたい。(デイリースポーツ・大西修平)
※
グッドババは07〜09年の香港マイル3連覇など誇る米国産馬。
エイブルフレンドは豪州産馬で、14年香港マイルを制した14/15シーズンの香港年度代表馬