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全ての競走馬にリスペクトを

2022年09月06日 21:40

栄光の影にさまざまな馬の物語がある(写真は今年のダービー馬ドウデュース。文中に登場する馬とは関係ありません)

 これから「重いテーマ」を論じる。しかし、現実問題として今の自分には何の力もなく、解決策も見当たらない。それでも、記者として当事者の気持ちをくんで書き記すことはできる。見切り発車ではあるけれど、ひとまず筆を執った次第だ。

 少し前の話。友人(某厩舎のスタッフ)の担当馬が引退したという話を耳にした。重賞には手が届かなかったが、堅実な走りで長く活躍。俗に言う“馬主孝行”な馬だった。

 ある日、調教スタンドで久しぶりに彼の姿を見かけたので「聞いたよ。引退したみたいだね。よく頑張ったね」と声を掛けた。すると、彼の口から予想外の言葉が返ってきた。

 「十分走ってくれたし、今後は乗馬としてゆっくりさせてもらえるものだと思っていました。そしたら…ネットオークションに出されたんですよ。確かに、パンクしたわけではないし、まだ走ることはできます。でも、あの馬はオープンまで行って、9歳まで頑張ったんですよ。もうゆっくりさせてあげてもいいじゃないですか」

 そして、次に聞いた彼の行動に私の心が動かされた。

 「実はそのオークション、僕も参加したんです。預かってもらう牧場とか、先のことなんて何も考えず、とにかく自分で買い取ろうと思ったんです。でも、用意していた200万円なんてアッと言う間でした。もう…どうにもならなかったです」

 2歳の新馬戦から担当し、引退するまで7年間。これだけ長く付き合える馬にはなかなか巡り会えないし、彼にとって家族同然の存在であったことは簡単に想像がつく。それでも、競走馬はオーナーのもの。一調教助手には何の権限もない。万策尽きた彼の表情には、やり切れない思いがにじんでいた。

 ただ、幸いなことに彼の元担当馬は、地方競馬で情熱のある調教師のもとに預けられ、今でも現役でバリバリと頑張っている。馬にとって、新たな出会いに恵まれたことを思えば、幸せな馬生なのかもしれない。ネットオークションの存在意義にも、一定の評価をすべきだと私は思う。

 だがその一方で、ある競走馬の悲しい現実も知っている。その馬もオープンで長く活躍していたのだが、屈腱炎を発症して現役を引退。乗馬になる…と思われた。しかし、のちにオークションに出され、新たなオーナーが購入すると地方競馬に転厩し、現役を続行。恐らく、ケガも癒えぬまま走らされているのだろう。過去の栄光は見る影もなく、成績は惨敗続き。この痛々しい姿を見るのが一番悲しく、やり切れない。どうにかならないものだろうか…。

 この両馬は紙一重。もしかしたら、友人の元担当馬も与えられた環境によっては悲惨な末路をたどっていたかもしれない。競馬界にはさまざまな人たちの思惑があるだけに、この問題がひと筋縄ではいかないことは十分に理解している。理想を求めるのであれば、きれい事では済まされない現実にも直視しなければならないだろう。

 それでも、引退馬のセカンドキャリアを後押しする活動は少しずつ広がりを見せているし、時代は動き始めている。落としどころがどこにあるのかは分からないが、命を預かる立場にある人には最低限、馬に対するリスペクトの気持ちだけはベースとしてあってほしいと切に思う。

 冒頭で述べたように、今の私にできることなど大海の一滴にすぎない。それでも、現場の声を発信することで、一頭でも多くの競走馬が引退後、幸せな馬生を送れることを心から願っている。(デイリースポーツ・松浦孝司)

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