【東西ドキュメント・美浦=12日】“無事之(これ)名馬”の格言を地で行くような競走馬にも別れの時はやってくる。「誘導馬になってからも元気で頑張れよ」。
トーラスジェミニ(牡7、父キングズベスト)が担当の佐藤昌夫厩務員に引かれて馬運車に乗り込んだ。一昨年の七夕賞を制した福島競馬場で誘導馬に転身するセカンドキャリアが用意され、12日付で競走馬登録を抹消。今後は宇都宮の馬事公苑で去勢された上で乗馬用の調教を積み、福島に移動する。「小桧山先生の定年(来年2月)よりひと足早い引退になりましたが、次の就職先が見つかって良かった」。取材に訪れた梅崎に寂しそうな笑顔を向ける佐藤厩務員。その傍らでは小桧山師が新たな門出を静かに見送った。
「競走生活を無事に全うできたのがなにより。引退発表にファンの反響が大きくて驚かされたが、福島でもファンに愛される誘導馬になってもらいたい」。18年7月デビューから5年間で43戦8勝。無事之名馬の旅立ちを祝うような
セキレイのさえずりが厩舎の屋根から聞こえてきた。