◆天皇賞・春・G1(4月30日、京都競馬場・芝3200メートル、17頭立て=稍重)
約2年半の大規模な改修工事を経て、4月22日に京都競馬場がグランドオープンした。開幕2週目に行われた新装一発目のG1は伝統の3200メートル戦。わくわくしながらスタミナ自慢たちの競演を見守った。
5歳初戦の日経賞で8馬身差の圧勝を飾った前年覇者、
タイトルホルダーが単勝1・7倍で堂々の1番人気。阪神大賞典を快勝した4歳馬の
ジャスティンパレスが同4・3倍で2番人気の支持を集めた。
勢いよくハナに立った
タイトルホルダーを、外から
アフリカンゴールドが制して最初のコーナーに入った。隊列が決まったかと思われた1周目のゴール前で、
アフリカンゴールドが失速(心房細動を発症、向こう正面で競走中止)。再び
タイトルホルダーが先頭に躍り出る、出入りの激しい展開となった。
勝負どころの2周目3コーナー。本来なら後続との差を広げていくはずの
タイトルホルダーが、馬群にのみ込まれていく。1番人気馬はそのままスローダウンして直線入り口で競走中止。場内が騒然とする中、
ディープボンドが4角で先頭に立った。持ち前の大きなス
トライドで押し切りを図ろうとしたが、直後に迫っていた
ジャスティンパレスが楽々とパス。最後は2馬身半差をつける快勝で初の
ビッグタイトルを手中に収めた。
周囲の動きに惑わされず、じっと末脚を温存。不利を受けない位置で立ち回ったルメール騎手の冷静さが光った。ディープインパクト産駒は71度目のJRA・G1勝利。その父サンデーサイレンスに並ぶ歴代最多タイ記録となった。
レース後の検量室前は、いつも以上に慌ただしかった。
タイトルホルダーに何が起きたのか。なかなか事実が確認できず、記者たちも混乱していた。しばらく時間がたってから出た診断結果は「右前肢ハ行」。重症でないことが分かり、ホッとした。
3年ぶりに淀へ戻ってきた伝統の一戦。現場で余韻に浸る暇はなかったが、いろんな意味で記憶に残るものとなった。(吉村 達)