【競馬人生劇場・平松さとし】フランス競馬といえば日本では凱旋門賞(G1)が有名だ。しかし、地元では凱旋門賞以上に人気があると言われている競走がある。
ディアヌ賞(G1)だ。
オークスにあたるこのレース。当日は
ファッションショーが行われる等、華やかな開催として有名で、フランスを主戦とするジョッキーの中には「最も勝ちたいレース」としてディアヌ賞を挙げる人も数多い。
そんな最もポ
ピュラーなレースを、クリストフ・ルメール騎手は3度も制している。「僕が乗った中で最も強いと感じた馬の1頭」と語る2005年の
ディヴァインプロポーションズや、日本で繁殖牝馬となり
ジェニアル(18年、メシドール賞・仏G3優勝)らを生んだ
サラフィナ(10年)、そして09年の
スタセリタだ。同馬とのディアヌ賞をルメール騎手は次のように振り返る。
「直線で早めに先頭に立つと、後は“バイバイ
エブリバディ”という感じ。楽勝でした」
スタセリタは
サラフィナ同様、日本で繁殖に上がると、
ソウルスターリングなどを生んだ。そしてその
ソウルスターリングは、母同様ルメール騎手を主戦として今度は日本のオークスに出走(17年)した。ルメール騎手が述懐する。
「直線で早めに先頭に立ち“バイバイ
エブリバディ”というレースぶり。お母さんと同じようなレース運びで、同じように楽勝しました」
そんな勝ちっぷりもさることながら、フランスと日本のオークスを母子で勝てたことが何よりもうれしかったと語った。
「こんなドラマチックな母子物語に携われたことに感動しました」
ちなみに
スタセリタでディアヌ賞を制した年、彼は1週間前に行われたジョケクラブ賞(G1、ダービーに相当)も勝利(ルアーヴル)した。そして、
ソウルスターリングの1週間後には
レイデオロで日本ダービー(G1)を優勝した。
そして今年は両レースで
チェルヴィニアと
レガレイラ(いずれも美浦・木村哲也厩舎)に騎乗する予定。どんなドラマが待っているだろう。 (フリーライター)