◆第59回報知杯フィリーズレビュー・G2(3月8日、阪神・芝1400メートル)
数々の名場面がある報知杯フィリーズレビューで、97年に
キョウエイマーチはレース史上最大着差の7馬身差で圧勝した。当時、ジョッキーとして騎乗した松永幹夫調教師(57)=栗東=は「『負けない』と思っていた」という28年前を振り返った。
今でもはっきりと覚えている。松永幹調教師が20年間の騎手生活で積み重ねてきたJRA重賞勝利は54。そのなかでも
キョウエイマーチに騎乗した97年の報知杯4歳牝馬特別(現報知杯FR)は特別な輝きを放っている。「本当にすごく自信があったんです。普通に『負けない』と思っていた。あんな自信満々で臨んだ重賞は(騎手時代に)唯一だったと思う」。
内ラチVロード 予感は本物だった。道中は2番手の外めから追走すると、4角では抑え切れないように先頭へ躍り出る。あとは後続を突き放すばかり。一頭だけ、別世界にいた。「すごく右に行く癖があったんです。だから、外へ逃げる左回りは上手じゃなかった。右回りならラチにくっつけておけば力を出し切れた」。内ラチ沿いの“Vロード”を通り、当時のレースレコードの1分21秒4で2着に7馬身差。レース史上、そして自身の重賞Vのなかでも最大着差だった。
新馬、1勝クラスVはともにダート。2着に計3秒3差で、ともに圧勝した。ただ、松永幹師がデビュー前からほれ込んでいたのは極上の
スピードだ。「軽い走りをするので、芝でも大丈夫だと思っていました」。引っ張り切れないぐらいの勢いで先行すると、直線でもしぶとく踏ん張り、続く雨中の桜花賞は4馬身差の圧逃劇。キャリア28戦中、4角で3番手以下は3度しかない。
「この馬は違うなという勝ち方でしたし、今まで経験したことのない
スピード。もちろん、印象に残っています」と松永幹師。四半世紀以上が過ぎても、名牝と駆け抜けた記憶が色あせることはない。(山本 武志)