デビュー3年目でブレーク間近だ。5月31日の東京1R。2番人気
シュガーハイに騎乗した小林美駒騎手(20)=美浦・鈴木伸=は強気に先手を主張し、6馬身差をつけて逃げ切った。自身にとって東京競馬場初勝利は、今年のJRA12勝目。通算12人目のJRA女性騎手として23年にデビューし、すでに同通算41勝を挙げている。
彼女の名が注目され始めたのは、昨年のこと。6月までに18勝を挙げるなど、ルーキーイヤーを上回るペースで勝ち星を重ねてきた。だがその矢先、函館競馬での落馬事故により左肩を脱臼骨折。4カ月間の休養を余儀なくされた。復帰したのは10月末。そこからまた一歩ずつ歩みを進めてきた。
最近は追う姿に力強さが増したと感じている。本人に聞くと「特に意識はしてないですが、徐々に徐々に動ける体に戻ってきたのだと思います。復帰した当初は筋肉面でも不安があって、トレーニングでカバーしていたものの、やっぱり馬に乗るのは違う筋肉を使うので…」。それでも今では力のある馬にも騎乗し、結果を出すことで関係者からの信頼も得ている。
注目すべきは“先行率”の高さだ。今年騎乗した177鞍中、逃げが16%(29回)、4角5番手以内が41%(73回)という数字が示すように、積極策への意識の高さが伺える。「まだ4キロ減の恩恵を受けているだけかもしれませんが」と前置きしつつ、「強い馬の依頼をいただけることが自分の自信にもなっている。このままのルーティンで行きたいです」と力を込める。
謙虚さの裏には騎手としての確かな芯がある。落馬の記憶を引きずることなく、「この前も目の前でパンクした馬がいたりとか…。競馬に乗っている以上は、事故はつきものだと思っているので、防げる事故は防いでいかないといけない」としっかりと前を向いた。
もちろん、20歳の等身大の姿もある。「KーPOPは相変わらずめっちゃ聴いています」と笑いながら話すその姿は、実に飾らない。だが馬上では見せるまなざしは、勝負師そのものだ。勝利に貪欲で、課題にも正面から向き合う。小林美駒は、単に“若手有望株”や“女性騎手”として注目される存在ではない。夏は14日から開幕する函館競馬に参戦。
ネクストブレークを果たすのは彼女かもしれない。(デイリースポーツ・刀根善郎)