今月5日には群馬県伊勢崎市で最高気温が41.8℃に達し、これまでの国内最高気温記録を塗り替えた。年々厳しさを増す暑さは“災害級”とも称され、競馬界でも対策が急がれている。中央競馬では昨年から、「競走時間帯の拡大」が始まったが、対応はそれだけにとどまらない。ソフト面、ハード面の両方で拡大を続けている「暑熱対策」について、JRAに話を聞いた。
「競走時間帯の拡大」を行った昨年の第2回新潟競馬(24年7月27日〜8月4日)では、熱中症と診断された馬が出走677頭のうち1頭にとどまった。新たな試みも成果を挙げたといえるが、実施している対策は発走時間の調整だけではない。競走馬総合研究所のこれまでの研究によれば、ウマの熱中症予防には馬体を徹底的に冷却して、体温を下げることが重要と判明している。そこで、JRAでは開催日の動線において、暑さの負荷軽減を図る設備を積極的に導入してきた。
函館を除く9競馬場の装鞍所、下見所、馬場内待避所ではミストを噴射。今年秋には京都競馬場にもウォークスルーシャワーが導入される予定で、全10場への設置が完了する。函館、札幌にはなかった厩舎地区馬房のエアコンについても、前者は26年入厩期間前、後者には27年入厩期間前に設置する予定。数年以内にはほぼ、どの競馬場でも冷却設備が整う。また、馬場内で動けなくなった馬の馬体冷却を行うための車輛を北海道を除く8場に配備。すべての競馬場の競走馬診療所には水冷可能な馬房を置くなど、万が一の事態にも備えている。
ソフト面でも整備を続ける。通常、装鞍所集合時刻は発走の60分前としているが、夏季(6月末〜8月)の東西主場においては発走40分前に変更。さらに、昨年の第2回新潟競馬で実施していたパドック周回時間の短縮も同期間に拡大した。福島、小倉、新潟、中京ではこれまで約10分、6〜7周していたものを、約5分、3周にまで縮小。札幌競馬、函館競馬においても約12分から約10分の周回に減らし、人馬が屋外にいる時間の短縮を図った。これには厩舎サイドから、「下見所の周回時間短縮は、人馬の負担が格段に軽減された」と好評だったという。
JRAの担当者は「暑熱対策をする最大の目的は、人馬の安全確保と円滑な競馬施行の両立」とし、「暑さが増す傾向にある中で、通年で競馬開催を行う中央競馬にとって、人馬の体調管理は極めて重要な課題」と強調。そのうえで、「人馬の熱中症発症リスクを低減し、馬と競馬に関わる全ての人々が安全で快適に過ごせる環境を提供することは、暑熱期における生活様式やアニマル
ウェルフェアへの世間の意識が高まる中、持続的に安定した競馬事業を継続していくために非常に重要であると認識している。今後も効果的で導入可能な暑熱対策について、積極的に研究・検討を進めていく所存」と語った。今後も対策が進んで、安全に競馬開催ができることを切に願いたい。