◆第30回ファンタジーS・G3(京都競馬場・芝1400メートル、良)
第30回ファンタジーS・G3は1日、京都競馬場で2歳牝馬12頭によって争われ、単勝1番人気の
フェスティバルヒルが重賞初制覇。今年の皐月賞馬で2日の天皇賞・秋に出走する
ミュージアムマイルを兄に持つ良血は、阪神JF・G1(12月14日、阪神)で世代の頂点を狙う。クリスチャン・デムーロ騎手(33)は短期免許での騎乗初日に重賞Vとなった。
普通なら“ない”競馬だった。
フェスティバルヒルは道中で前を行く馬の後ろにハマり、位置を押し上げられない。3角過ぎでも目の前に馬群の密集を見る形での後方3番手。四位調教師も「並びが絶望的だった」と振り返る。それでも動じず、最後の爆発力だけを信じていたのがCデムーロだ。
いたずらに動かず、仕掛けの時を待つと、直線入り口で視界が開ける。瞬時に手綱を押してのGO
サイン。ラスト300メートルで右ステッキを振り下ろし、闘争心に火をつけた。あとは全身で手綱を押せば押すほど、増していく勢い。馬場の真ん中を割るように脚を伸ばし、上位3頭が首、鼻差でタイム差なしの混戦を制した。「すごくいいポジションではなかった。どうなるかと思ったけど、直線で真ん中を突くと反応して、すごくいい脚できてくれました」とホッとした表情で振り返る。
世界の名手は疲れを知らない。今年はフランスで勝利数1位。自身初の仏リーディングを射程圏に入れる主戦場で、26日にはG1のロワイヤル
オーク賞も勝っている。その6日後に短期免許を取得した日本での騎乗初日に重賞V。その勢いに乗って、2日の天皇賞・秋は兄で皐月賞馬の
ミュージアムマイルに騎乗する。「乗るのは1年ぶりですが、前走でもしっかり勝っています。強いメンバーになるが、頑張ってほしい」と笑みを浮かべた。
名手に導かれ、初の重賞タイトルをつかんだパートナーは今後、阪神JFを視野に入れる。「勝ち切れたのがよかった。この後、無事なら年末の大きなところに行きたい」と四位調教師。着差以上の輝きを放った良血馬が2歳女王へ名乗りを上げた。(山本 武志)
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フェスティバルヒル 父
サートゥルナーリア、母ミュージアムヒル(父ハーツクライ)。栗東・四位洋文厩舎所属の牝2歳。北海道安平町・ノーザン
ファームの生産。通算成績は3戦2勝。総獲得賞金は4478万5000円。重賞初勝利。馬主は吉田勝己氏。