今年の
ジャパンCは唯一参戦した外国馬
カランダガンの勝利で幕を閉じた。世界No.1ホースの来日で戦前から大いに盛り上がり、レースでもこれほど興奮した
ジャパンCは、いつ以来になるだろうか。まさに日本VS世界。それを象徴するようなレースだった。
改めて重要さを感じさせられた。20年は3頭の3冠馬
アーモンドアイ(1着)、
コントレイル(2着)、
デアリングタクト(3着)が激闘を繰り広げ、
イクイノックスが快勝した23年はロンジンワールドベストレースで世界1位の評価を得た。それでも何かが違う。記者の中では常に物足りなさがあったのだが、それはやはり強い外国馬の存在だ。海外の強豪を日本馬が迎え撃つ-そんな本来
ジャパンCのあるべき姿がなかったからだ。
外国馬の参戦は近年減少傾向にあり、19年はゼロ。そんな流れを食い止めるべく、JRAは22年、東京競馬場に国際厩舎を新設するなど外国馬誘致に力を入れてきた。その効果もあってか、昨年はG1・6勝馬
オーギュストロダンや、豪華メンバーだったキングジョージを制した
ゴリアットが、そして今年も1頭だけではあったが欧州年度代表馬が乗り込んできたように、質の面は明らかに向上している。
カランダガンを担当するロベル助手は、11年
ジャパンCで来日経験があるが、「検疫を千葉県の競馬学校ではなく、東京競馬場で行えるようになって本当に良くなった」と強調。JRAの取り組みが実を結びつつあり、そしてこの傾向が来年以降も続く可能性が高くなった。
先月半ばにJRAは国際交流競走の褒賞金、経費補助制度の改正案を発表した。褒賞金を含めた全ての面を
ジャパンCに特化し、これまで以上にレベルの高い外国馬を誘致するための策だ。
指定レースの英ダービー、キングジョージVI世&クイーンエリザベスS、インターナショナルS、英チャンピオンS、愛チャンピオンS、凱旋門賞、BCターフを2年以内に制した馬が
ジャパンCを勝てば500万ドルの褒賞金が得られる。これは従来より200万ドルもアップした。ちなみに、褒賞金は200万ドルだが指定レースの2、3着馬も対象となり、レーティング118以上の馬もそれと同等の扱いになる。
対象7レースの勝ち馬が
ジャパンCに勝つと賞金5億円+褒賞金500万ドル(約7億8000万円)となり、サウジCの15億円に次ぐ世界2位の高額賞金となる。JRAはこれまで以上に
ジャパンCへの外国馬誘致に力を入れて取り組む姿勢を見せており、この施策が成功すれば、強豪馬がコンスタントに参戦するようになるだろう。また、『府中の高速馬場では外国馬の出番なし』という通説を
カランダガンが20年ぶりに打ち破ったことも、大きな意味を持つはずだ。
競馬ファンの時代から
ジャパンCは好きなG1だった。外国馬は不確定要素があるだけにやっかいな存在だが、いろいろなことを想像しながら予想するのが楽しく、それこそが
ジャパンC予想の醍醐味(だいごみ)でもあった。そんな気持ちを忘れかけていたところでの欧州年度代表馬の参戦&勝利は、昭和生まれの記者の心をワクワクさせてくれた。今後も、晩秋の府中で今年のような日本馬と外国馬の激闘が繰り広げられることを切に願う。(デイリースポーツ・小林正明)