ハナ差でイナリワン(右)が差し切った平成元年の有馬記念(撮影:高橋正和)
平成最初の有馬記念、その主役は、昭和最後の有馬記念を制したオグリキャップだった。
秋6戦目という異例のローテーションであったが、前走のジャパンカップは世界レコードタイでホーリックスの2着。タフネスぶりを見せつけた怪物に、競馬ファンは、ファン投票歴代最高となる19万7682票を投じ、単勝1.8倍の1番人気に支持する。
2番人気はスーパークリーク。記念すべき第100回の天皇賞でオグリキャップを降して優勝した馬だ。離れた3番人気に、前年の2歳チャンピオン・サクラホクトオー。春は道悪に泣いたが、この秋に復活を遂げていた。同年の天皇賞・春、宝塚記念の勝ち馬イナリワンは、秋の3連敗が響いて4番人気にとどまっていた。
レースは大方の予想通り、ダイナカーペンターがハナを切り、1枠1番からスタートしたオグリキャップは2番手をキープ。その直後を武豊・スーパークリークがぴったりと追走。サクラホクトオー、イナリワンは後方から競馬を進める。
4コーナー手前でオグリキャップが早めに先頭に立つと、17万人を超える大観衆の熱狂は最高潮に達する。しかし、直線で外からスーパークリークに並びかけられると、いつもの豪脚は火を吹かず、残り200m地点でスーパークリークが2馬身のリード。多くのファンがスーパークリークのグランプリ制覇を確信したその瞬間、外から忍び寄ってきたのがイナリワンだった。2頭並んでのゴールは、ハナ差でイナリワンに軍配が上がった。オグリキャップは5着。
レース後、武豊騎手が発したコメントが、オグリキャップの凄みを凝縮している。
「もう一度、オグリキャップが伸びてきたのかと思った」