有馬記念史に残る名勝負となった平成11年(撮影:下野雄規)
天皇賞・春、天皇賞・秋、ジャパンカップに続く、この年のGI・4勝目を目指すスペシャルウィークと、そのスペシャルウィークを宝塚記念で圧倒したグラスワンダー。2頭にとって二度目の対決は、スペシャルウィークがこのレースでの引退を表明していたため、最後の対決でもあった。
ハナを切ったゴーイングスズカは、13秒台のラップが並ぶ超スローペースを作り出す。ナリタトップロード、ダイワオーシュウが続き、グラスワンダーは中団やや後ろ、スペシャルウィークは最後方からレースを進めていく。
レースは、3コーナー過ぎから動き出す。グラスワンダーが外目を回って一気にポジションを上げると、スペシャルウィークもそれに呼応するかのようにスパートを開始。この2頭が馬群を飲み込むようにして4コーナーを回っていく。
直線では、一歩先にツルマルツヨシが抜け出しを図り、外からグラスワンダーとスペシャルウィークが追う。間を割って伸びてくるのはテイエムオペラオー。坂を上りきったあたりでグラスワンダーの手応えが怪しくなったように見えたが、迫ってきたスペシャルウィークと馬体が併せるとエンジンが再点火。もうひと伸びで内のツルマルツヨシとテイエムオペラオーをねじ伏せ、最強の2頭は馬体を併せたままゴールする。
勝利を確信するスペシャルウィーク武豊はウィニングラン。グラスワンダー的場は苦笑いを浮かべ検量室前へと戻っていく。しかし、着順掲示板の一番上に表示されたのは7番。グラスワンダーがゴールの瞬間にハナだけ出ていた。その差は4センチ。レース後に武豊が「競馬に勝って勝負に負けたという感じ」と振り返るほどの際どい勝負であった。
1900年代最後の有馬記念。死力を尽くした4頭によるゴール前は、紛れもなく平成の有馬記念史に残る名勝負である。