グリーンF

【エンプレス杯回顧】読みどおりのハイペースでアンデスクイーンが有終の美(斎藤修)

2020年03月06日 18:00

有終の美を飾ったアンデスクイーン(撮影:高橋正和)

 逃げたい馬が揃ってアンデスクイーンには展開が向くという予想をした人は多い。そのとおりの展開になったのだが、前半のハイペースは予想以上で、それがアンデスクイーンの引退の花道をお膳立てする結果となった。

 クレイジーアクセル、サルサディオーネ、シークレットアリア、3頭の先行争いとなったが、内枠のクレイジーアクセルがハナを取りきった。川崎2100mでは、たしかに先行争いが激しくなることもあるが、普通は最初の3コーナーまでに隊列が決まればペースは落ち着く。しかし今回はそうはならず、前半1000m通過(推定、以下同)が61秒1。近年の川崎2100mのダートグレードの平均的なペースは63〜64秒台だから2秒以上速い。

 過去10年の川崎記念、エンプレス杯の前半1000mの通過タイムを調べてみたところ、もっとも速かったのが2012年川崎記念の61秒3だった。これは逃げたのがスマートファルコンで、しかも当時は今よりもタイムの出る馬場。それを上回る今回の前半は、まさにクレイジーなハイペースだった。

 1周目のスタンド前で格下のシークレットアリアが位置取りを下げ、代わって前2頭からやや離れた3、4番手でラインカリーナとプリンシアコメータが追走。このあたりがペース的にはちょうどいいのではないかと見ていたのだが。3コーナー過ぎで速くも前2頭がずるずると後退し、ラインカリーナ、プリンシアコメータが馬体を併せて先頭へ。しかしこの2頭の位置取りでも、なお厳しいペースだった。

 向正面でもまだ先頭から10馬身ほども離れた縦長の中団に位置していたアンデスクイーンが直線半ばで難なくとらえて完勝。レースの上り3Fが42秒0もかかったところアンデスクイーンは40秒4。ハイペースに惑わされず、存分に能力を引き出したルメール騎手の見事な騎乗だった。

 さらにうしろから直線脚を使った大井のナムラメルシーが2着。たしかにTCK女王盃で地方馬最先着の5着ではあったが、続く前走B1B2特別が10着惨敗では狙いずらく、単勝177倍の8番人気。近年の牝馬ダートグレードでは南関東B級でようやく勝ち負けという馬でも2着、3着に来ることがあるから難しい。昨年だけでも、TCK女王盃では前走C1戦で4着だったマルカンセンサーが2着、スパーキングレディーCでは前走でようやくB1特別を勝ったローレライが3着ということがあった。

 そして3着に入ったのがダート初参戦のパッシングスルー。向正面からは勝ち馬に連れられるようにぴたりと直後で位置取りを上げてきた。「返し馬から(ダートに)戸惑っていたし、前半は進んでいかなかった」(森泰斗騎手)とのことだが、むしろそれで前半脚を溜めることができたのだろう。地方のダートに慣れれば、今後この路線での活躍も期待できそうだ。

 それにしてもクレイジーアクセルとサルサディオーネは、TCK女王盃でも同じように競り合って、ともに二桁着順に沈んでいた。そのTCK女王盃は前半1000m通過が61秒7で、直線を向くまで2頭が先頭だったが、今回はコース形態や距離を考えるとさらに無謀なペースだった。

 昭和から平成初期のころは、何が何でも逃げるという馬や、常に1頭だけポツンと最後方という、いわゆる“テレビ馬”がいたが、この2頭はともにダートグレードで勝ち負けできる実力馬。今の時代にこうしたレースを2度も続けるというのはめずらしい。

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