強い風が吹きつけるなか、第55回フローラステークスのゲートが開いた。
第2コーナーを回りながら
シャンドフルールがハナに立った。
リヴァージュ、
ウィスパリンホープらがつづく。
横山武史の
ウインマリリンは前3頭から差のない4番手の内を進む。直後の外に
ダミアン・レーンの
ホウオウピースフル。クリストフ・ルメールが騎乗する1番人気の
スカイグルーヴは、そこから1馬身半ほど遅れた中団につけている。先手を取ることも予想されていたのだが、脚を溜める競馬をすることになった。
向正面では強い追い風を受けて走ることになる。
1000m通過は58秒6。風を考慮に入れても、やや速い流れになった。
縦長になった馬群が3コーナーに入って行く。先頭から
ウインマリリンまでの差は5馬身ほどにひらいている。横山武史は手綱をガチッと抑えたままだ。
先頭の
シャンドフルールは持ったままで4コーナーを回り、直線へ。
ダートコースから砂が舞い上がるなか、向かい風を受けた各馬がスパートをかける。
ウインマリリンが、前の
シャンドフルールを風除けとして利用したのは、ほんの数完歩だけだった。すぐさま内に進路を取り、
シャンドフルールと最内の
ウィスパリンホープとの間を割って行く。そして、ラスト400mを通過したところで完全に抜け出し、先頭に躍り出た。
ウインマリリンは、外の
レッドルレーヴ、
スカイグルーヴと馬体を離して叩き合う。レッドもスカイも、直線入口から前がクリアになった馬、つまり、ずっと向かい風を受けた馬であった。
これら2頭の間を割って
ホウオウピースフルが猛然と追い上げくる。さらに外からは
フアナも伸びてくる。
ホウオウピースフルと
フアナは、ラスト300mを切るあたりまで前が壁になり、風を受けずにいた。
ラスト200m付近で右ステッキを入れようとした横山武史の手から鞭が飛んだ。それでも必死に手綱をしごき、
ウインマリリンを叱咤する。
ホウオウピースフルと
フアナが1完歩ごとに内の
ウインマリリンとの差を詰めたが、及ばなかった。
勝ったのは
ウインマリリン。
ウインマリリンにとっても横山武史にとっても嬉しい重賞初制覇となった。
これで4戦3勝。3勝すべてが、デビュー4年目の横山武史の手綱によるものだ。
強風をモノともせず伸び切った根性娘のオークスが楽しみになった。
(文:島田明宏)