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ジャパンC・G1」(29日、東京)
3強のうち、一体どの馬を軸にすればいいのか-。デイリースポーツ・松浦孝司がその問いに答えるべく、血統面からアプローチした。いずれも府中2400メートルで最上の結果を残してきた名馬だが、導き出されたのは無敗三冠牝馬
デアリングタクト。SSのクロスに裏打ちされた爆発力は申し分なし。
パワーを要する今の芝には、重厚な血統構成が合致すると見立てた。
デアリングタクトの血統的な妙は、父の母シーザリオと、母の母デアリングハートが05年桜花賞で戦っていることだろう。
ラインクラフトに敗れはしたものの、
シーザリオが2着、
デアリングハートが3着と好レースを展開。桜花賞はもちろんのこと、牝馬三冠を獲れる下地は整っていた。
良血の母はわずか1戦で現役を引退。数を使っていない分、活力があり余っていたのか、初子からいきなり歴史的名牝を輩出した。父
エピファネイア×母の父キングカメハメハの配合は、京成杯2着の
スカイグルーヴや、現3勝クラスの
クラヴェルと同じ。サンデーサイレンスの4×3のクロスが効果的で、大種牡馬のDNAをうまく受け継いでいる。
牝馬の活躍が目立つ傾向があり、この血統の“爆発力”を発揮するには精神面の成長が不可欠。年齢を重ねつつ、メンタルが成長すれば、さらなる飛躍が期待できそうだ。
コントレイルの母ロードクロサイトはバリバリの米国血統で、ミスプロ系の中でもよりダート色が濃いファピアノ系。日本では、エンパイアメーカーや
ダンカークの名を挙げれば分かりやすいだろうか。持久力に優れている半面、切れ味に欠ける産駒が多く、中長距離のダートで活躍馬が多いのが特徴的だ。
だが、やはり大種牡馬ディープインパクトの血は偉大だ。母の父アンブライドルズソングとの配合からは、15年朝日杯FSを制した
ダノンプラチナを輩出。父系の軽さ&母系の重厚感がマッチしたことで、相乗効果が生まれている。
ディープと同じSS系×母の父アンブライドルズソングの配合には18年大阪杯&19年
ジャパンCを制した
スワーヴリチャード(父ハーツクライ)や、14年の菊花賞馬
トーホウジャッカル(父スペシャルウィーク)がおり、ファピアノ系の持久力を大舞台で遺憾なく発揮している。
アーモンドアイに関してはもはや、血統の域を超えてしまった感もあるが、いま一度、G1・8勝馬の
パワーの源を探ってみたい。
父は、日本と香港で短距離G1・6勝を挙げた“世界の
ロードカナロア”。種牡馬としても、本馬の他に18年
ホープフルS&19年皐月賞を制した
サートゥルナーリアや、18年マイルCSを制した
ステルヴィオを輩出しており、産駒に良質な
スピードを伝えている。
母は06年のエリザベス女王杯馬
フサイチパンドラ。他に目立った産駒は見当たらないものの、一つ下の半妹に昨年のアネモネS3着馬
ユナカイト(父ヨハネスブルグ)がいる。この姉妹の共通点を見いだすと、父である
ロードカナロアとヨハネスブルグには、ともにストームキャットの血が入っている。SS系×ストームキャットのニックスは、13年ダービー馬
キズナを筆頭に活躍馬がズラリ。恐らく、爆発力の源流はここにある。
実績だけなら18年に驚異のレコードVを果たした
アーモンドアイに逆らう手はないが、当時は斤量53キロ。血統から見える“マイル〜中距離色”を高速馬場で補えた可能性は十分にある。昨年の有馬記念での衝撃的な惨敗(9着)も気になる材料。今秋の東京芝はかなり馬場が荒れているだけに、2400メートルでこの馬らしいパフォーマンスができるかどうかが鍵になりそうだ。
その点、
デアリングタクトは3歳牝馬で斤量が53キロ。父
エピファネイア×母の父キングカメハメハの重厚さを兼ね備えており、重馬場の桜花賞Vの走りを見ても、馬力を要する今の東京芝は望むところだろう。スタミナも問題なし。3歳牝馬が活躍しているデータも後押しする。
コントレイルも母系が
パワー型のマイラー血統。荒れた馬場でもさほど苦にすることはないはずだ。何より三冠戦の中でも菊花賞が最も苦しい競馬で、ダービーを圧勝した2400メートルで戦えるのは大歓迎。あっさり“父子制覇”をやってのけても驚けない。