昨年の栄冠賞を制したサイダイゲンカイ(撮影:田中哲実)
2歳世代最初の重賞であるこの栄冠賞は、全国区での活躍馬を数多く輩出する、いわゆる出世レースだ。ただ、後の活躍という点においては、ここでの着順は不問である。ほんの一例だが、JBC2歳優駿で全国に名を響かせ、先日の北海優駿で門別3冠に王手をかけたラッキードリームも、このレースは9着だった。つまり、栄冠賞に出走すること自体が登竜門なのである。
さて、今年のメンバーも粒ぞろいだが、最もスケールの大きさを感じたシャルフジンを本命とした。特筆すべきは、異例のタイムをマークした能検の内容である。能検は勝ち負けを競うレースではないので、走破タイムだけでなく、仕上がり度合いや馬場状態、道中・直線の手応えと脚勢などを総合して馬のポテンシャルを見極めなければいけない。
前提はそうなのだが、稍重の馬場で手綱を緩めず追ってきたとはいえ、800m47秒7という数字は破格で、10年に一度見られるかどうかのレベルだ。スピードの持続力が特に優秀なタイプで、中距離戦でこその馬だと見ているが、1100mで圧勝したデビュー戦を見る限り、スプリント戦への対応力も十分なものがある。ここでの走りも楽しみだが、ぜひともJBC2歳優駿に駒を進めてほしい逸材である。
対抗としたモーニングショーは、能検では馬体も重めで51秒8の3着だったが、デビュー戦で驚異的な変わり身を見せ、良馬場で1100mのレコードタイムをマークした。追ってからの反応の良さが強みで、この点は激しい展開の中で大きな武器になろう。
少頭数ながら新馬戦・オープンを連勝しているラブミードールの実績は、当然評価すべき。1200mに対応したという点も強調材料だ。プライルードのデビュー戦は時計の優秀さもさることながら、レース巧者ぶりを強く印象づけた。以下、2戦目できっちり変わったエイシンヌプリ、まだ奥があるはずのウイスキータイムまでを抑えとしたが、正直、印が足りない。これほど予想の難しく、かつ興奮するレースは他にない。
(文:競馬ブック・板垣祐介)