今年も残すところ僅かになりました。
そんな年の瀬、ラストランを終えたキセキの様子を見に行きました。
有馬記念のレース後はいつもどおり、栗東トレセンに帰ってきたキセキ。いまは「年明けの出発に備えて体調を整えているところ」(辻野師)とのことです。
「担当の清山さんが、惜しみなくケアしてくれていますよ」と優しい笑顔の辻野師。
そういう辻野師も助手時代からずっとキセキと共に過ごしてきたんですよね。
「角居厩舎からのご縁で開業直後からキセキを引き継ぐことができたのは本当に有難いことでした。勝ち星をあげることはできず申し訳なかったです。でも、それでもファンの方がすごくすごく応援してくれました。特に引退が決まってからはファンレターもさらに来るようになりました」
キセキはホント、父であるルーラーシップによく似ています。
「男前ですよね! 姿もそうですが、馬っけがあまりないところも似ていますね。ルーラーも牝馬にあまり興味を示さなかったので種牡馬になって大丈夫かな? と心配していたのですが…問題なかったので、きっとキセキも頑張ってくれるでしょう(笑)」
ゲートについては、ルーラーシップは気持ちが荒ぶり過ぎて出ませんでしたが、キセキは大人しすぎて出なかった。同じ“ゲート難”でも具体的なクセには違いがありました。でも、ラストの有馬記念ではちゃんと出てくれましたね。戦法がゲート次第で変わってしまっていただけにファンの皆さんもかなりハラハラさせられたと思いますが、それもまたキセキの魅力のひとつでもあったかな、と想ったりもします。
キセキは2歳の12月から7歳の12月までの丸5年、33戦ものレースに出走してきました。
「キセキがここまで大きなけがをすることもなく、幾度の海外遠征もこなしながら、本当に気丈に頑張れたのは、筋肉の柔らかさが大きいと思います。普通、年をとればそれなりに筋肉が硬くなっていくものですが、キセキはいまもなお、とてもしなやかな筋肉をしているんですよ」
そして、そのキセキの体に流れる血には日本競馬で活躍した馬たちが凝縮されていますね。
「父のルーラーシップにはキングカメハメハとエアグルーヴの血が流れているし、母方は父がディープインパクト、母が桜花賞2着ロンドンブリッジ、母の姉妹にはオークス馬のダイワエルシエーロもいます。日本競馬を代表するような血筋だけに、種牡馬としての成功を心から願っています。
そして、キセキの仔を僕の厩舎で預かることができたら清山さんに担当してもらいたいと思っています。僕たちの仕事の醍醐味は、手掛けた馬やその血統の子供を新たに育てられること。その日のためにもまずは年明けに無事キセキを北海道に送り出します」(辻野師)
(取材・文:花岡貴子)