規格外の末脚を武器に活躍 異彩を放った怪物ルヴァンスレーヴ/GIプレイバック

2022年12月03日 18:10

2018年のチャンピオンズCを制したルヴァンスレーヴ(c)netkeiba.com

 12月4日(日)に中京競馬場で行われるチャンピオンズカップ(3歳上・GI・ダ1800m)。今年も下半期のJRAダート王者決定戦に精鋭16頭が出走する。

 当記事では、2018年のチャンピオンズCを制するなど、ダートのGI級競走4勝を挙げ、同年のJRA最優秀ダートホースならびにNARグランプリダートグレード競走特別賞に輝いたルヴァンスレーヴの活躍を振り返る。

 ルヴァンスレーヴは父シンボリクリスエス、母マエストラーレ、母の父ネオユニヴァースという血統。社台コーポレーション白老ファームで生産され、現役時代は美浦・萩原清厩舎に所属した。

 2017年8月に新潟競馬場でデビューを迎えたルヴァンスレーヴは、初戦から圧巻のパフォーマンスを披露。スタートで出遅れて最後方からの競馬となるも、向こう正面で一気に先頭に立つと、直線は持ったまま7馬身差の圧勝で初陣を白星で飾る。同レースには、のちに兵庫CS2着などの実績を残すビッグスモーキーや、古馬OPまで勝ち上がるゴライアスが出走していたが、これらを相手にスケールの違う走りを見せた。

 続くプラタナス賞でも、芝スタートや距離短縮などを全く問題にせず、終わってみればノーステッキで2馬身半差の圧勝。勝ちタイムの1:36.2は2歳コースレコードで、鞍上のM.デムーロ騎手が「素晴らしい馬! この馬ヤバイよ!」と興奮気味に話すほど、この2戦で見せた内容は衝撃的なものだった。

 僅か2戦で強烈なインパクトを残し、同年12月の全日本2歳優駿で重賞初挑戦。舞台となる川崎競馬場は小回りでコーナーもキツく、圧倒的に先行有利と言われる競馬場とあって、スタートが苦手なルヴァンスレーヴにとってはキーポイントに。しかし、同馬は全く問題にしなかった。スタートで出遅れて不利も重なり、最後方からの競馬となったが、3コーナー付近から進出すると、直線は持ったまま他馬をごぼう抜き。規格外の走りで不利を跳ね除けて見せたのである。

 そして、明けて3歳になった2歳王者はますます勢いを増していった。年明け初戦の伏竜Sこそ不覚を取ったが、ユニコーンSでは「ここでは力が違いました」と実況アナウンサーが語るほどの大楽勝。まるで重賞という舞台を忘れてしまうような走りを見せ、続くジャパンダートダービーでは、後に東京大賞典4連覇など輝かしい成績を残すオメガパフュームらを相手に1馬身半差をつけて完勝。同世代におけるダート路線の頂点に立った。

 同年秋の南部杯では古馬との初対決。前年のJRA春秋ダートGIを制したゴールドドリームが出走し、生涯で初めて1番人気を譲る格好となった。しかし、レースでは終始ゴールドドリームより前で運ぶと、1馬身より差を詰めさせず完封。戦前囁かれた「3歳馬は南部杯を勝ったことがない」というジンクスも同馬には全く関係がなかった。

 ここまで7戦6勝、ダートGI級競走3勝の実績を引っ提げ、勇躍チャンピオンズCに出走。出走した15頭中、13頭が重賞勝ち馬というダート王者決定戦に相応しいメンバーが揃ったが、ここでも単勝1.9倍と圧倒的な支持を集める。

 レースは2枠2番からスタートを切ると「なんと今日は3番手に付けています!」と、実況アナウンサーやファンも驚く好ダッシュ。課題だったゲートの悪さを克服し、先行集団の一角へ取りついた。

 抜群の手応えで直線を迎えると、逃げるアンジュデジールを実にあっさりと交わし、手応え楽に2馬身半差で優勝。同世代だけでなく、国内に敵無しを思わせる圧巻のパフォーマンス。M.デムーロ騎手はレース後に「この馬には夢が一杯あります」と語り、ファンの多くも「この馬なら世界の大舞台でも」と思ったことだろう。しかし、これが生涯最後の勝ち星となる。

 その後は翌年のフェブラリーSやドバイ遠征を目標に調整を続けていたが、相次ぐ脚部不安で長期離脱。気づけば1年半が経ち、かしわ記念で復帰したが勝ち馬から大きく離された5着。続く帝王賞でも10着に敗れ、同年夏に引退、種牡馬入りが発表された。

 ルヴァンスレーヴの引退後は同世代の馬が大活躍。オメガパフュームは帝王賞制覇、東京大賞典4連覇など大井の申し子として名を馳せ、アルクトスは南部杯連覇に加えてダート1600mの日本レコードを打ち立てた。

 また、チュウワウィザードはダートGI級競走4勝を挙げ、ドバイWCでも2着、3着と2年連続で好走。2020年のチャンピオンズCを制し、ルヴァンスレーヴと従兄弟同士で同一GI制覇という珍しい記録も達成している。

 これら強豪揃う2015年世代で強い輝き放ったルヴァンスレーヴは、社台スタリオンステーションで種牡馬として新たな生活をスタート。2021年には国内最多の223頭、2022年には196頭に種付けを行い、来年には無事に産駒がデビューするはずだ。

 勝負や競馬の世界にタラレバは禁句であるが、もし故障がなければGIをいくつ勝っていただろうか――。夢の続きは産駒に託すことにしたい。

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