父・洋一さん(中央)に花束を手渡す福永祐一、左は母の裕美子さん
今度こそ、本当の“お別れ”だ。サウジアラビアでの騎乗を最後に、2月いっぱいで騎手を引退。新たな一歩を踏み出す福永祐一調教師(46)の騎手引退式が4日、全レース終了後に阪神競馬場のパドックで行われた。両親をはじめ、師匠の北橋修二元調教師、ジョッキー仲間、そして1万人を超えるファンに見守られる中、涙を浮かべつつ最後の思いを伝えた。
涙のフィナーレだった。約1万1500人のファンが集まった“騎手・福永祐一”の引退式。父・洋一さん、母・裕美子さんへ感謝の花束を贈ったユーイチの声が震えた。
「全く競馬に興味のない私が急に騎手になるということで驚かせてしまい、つらい思いをさせ続けてきました。27年、こんな親不孝はないなと思って続けてきましたが、健康な状態で引退することができて、ようやく長きにわたった親不孝を終えることができてホッとしていますし、申し訳なく思っています」
父が落馬事故によってターフを去ったのが44年前の阪神競馬場、くしくも同じ3月4日だった。「福永洋一の息子として生まれてこなければ、騎手の道を選ぶこともなかったですし、ユタカさんの存在がなければ騎手の道を志すこともなかったと思っています」。2人の天才に近づくために全てを費やしてきた“努力の天才”だった。「騎手としての私は、福永洋一と北橋先生、その2人の作品だと思っています。自分が努力できたのは、たくさんの方が支えてくれて、その方々に報いるために頑張るしかできなかった。ようやく2人の元から巣立つことができたのかなと思います」と頭を下げた。
これからは来春の開業に向けた新たな日常が始まる。直近では藤原厩舎のドバイ遠征に同行するなど、世界を飛び回って知見を広めるつもりだ。「幸せな騎手人生だったし、幸せな引退式でした。最高の騎手人生でした」。式の最後はMr.Childrenの『終わりなき旅』がかかるなか、万雷の拍手に包まれた。JRA歴代4位となる通算2636勝を積み重ねた名手は、ファンに惜しまれつつ、次の旅路へ歩みを進める。
◆武豊「数々のいいレースを一緒につくることができたし、僕自身もユーイチのおかげでたくさん成長できたので感謝しています。今後は調教師として名馬を連れて、また競馬場に戻ってきてください」
◆和田竜「最近、昔のことを思い出すのですが、よく集まってユタカさんとか先輩ジョッキーをどう打ち負かそうかとしゃべっていたことを思い出します。ここまで無事に、すごい実績を挙げて引退したことを誇りに思いますし、孫の代まで“福永祐一の同期やったぞ”って自慢したいです」
◆川田「長い間、本当にお疲れさまでした。サウジアラビアでの最終騎乗を終えたあとの爽やかな笑顔、とても心に焼き付いています。無事に終われて何よりです」