「日本ダービー・G1」(28日、東京)
2冠制覇を目指す
ソールオリエンスなど、昨今のG1において目覚ましい戦果を挙げている社台
ファーム。その躍進の裏には東北地区における競走馬の中継基地であり、育成拠点となっている山元トレーニングセンター(宮城県山元町)がある。活躍馬を次々と送り出す同トレセンの秘密を探るべく、上水司場長(49)に話を聞いた。
今、社台
ファームがアツい。かつてはトップを走っていた名門牧場も、19年〜21年はJRA・G1未勝利と大苦戦。しかし、春2冠牝馬
スターズオンアースや菊花賞馬
アスクビクターモアが登場した22年から追い風が吹いている。
23年に入ってもいい流れは続く。皐月賞を
ソールオリエンスで制し、NHKマイルCも
シャンパンカラーがV。その快進撃を支えているのが、外厩である山元トレーニングセンター(通称・山元トレセン)だ。社台
ファームは何が変わったのか-。東北の拠点をまとめる上水場長はこう答える。
「いろいろ取り組んできたことが、やっと形になってきた感じですね。(牧場の)コース改修もありますが、スタッフもスキルアップして育ってきています。一頭一頭に対するみんなの情報共有も進めてきました。それらの形が段々とできつつありますね」
山元トレセンは92年に開場し、11年の東日本大震災で被災するも復興。20年3月に坂路コースの改修工事を行い、翌21年には周回コースにも着手した。坂路コースを全長740メートルから900メートルに延長し、高低差も27メートル→33メートルにアップ。これらの
リニューアルにより、調教効果が格段に高まった。場所によって傾斜があった周回コースもほぼ平たんに。いずれのコースも、以前まで使っていたポリトラックからウッドチップに変更した。
同場長は「一頭一頭、個性が違うのでこれという正解はないのですが、良くなった周回コースをうまく使えるようになりましたね。角馬場も作り、調教の幅が広がりました」と語る。また、北海道千歳市の社台
ファームも15年と19年に調教コースを改修して、坂路をダートからウッドチップに替えている。
牧場一体となった創意工夫が結果に結びつき、22年は2歳戦から好調だった。中でも22年出会った一頭の2歳馬には、並々ならぬ素質を感じていたという。「デビューに向けて調整を進めていた昨秋、現場から報告がありました。『これはモノが違いますよ』と」。その逸材こそが3戦無敗で皐月賞を制した
ソールオリエンスだった。
同馬は皐月賞V後も短期放牧(4月19日〜5月4日)で体調を整えた。「京成杯の直後より
テンションは少し高かったのですが、すぐに落ち着きを取り戻し、カイバも良く食べてくれました。2週間とはいえ、うまくケアして高いレベルを維持するイメージで送り出せたと思っています」と胸を張る。
社台
ファーム生産馬のダービー制覇となれば、10年
エイシンフラッシュ以来13年ぶりになる。「手塚先生から“今までで一番いい”と言ってもらえたように、馬はさらに成長しています。社台
ファームを背負って頑張ってほしいし、もちろん期待しています」。23年5月28日は、社台
ファームが高らかに凱歌を上げる日になる。
◆上水司(うえみず・つかさ) 1973年10月19日、北海道出身。実家は89年ダービー3着馬サーペンアップなどを輩出した登別上水牧場。92年、社台
ファームに入社し、99年に山元トレセンへ。牧場ではデュランダルやネオユニヴァースといった名馬たちの調教をつけていた。2021年、同トレセン場長に就任。