全日本2歳優駿JpnIは、
ミリアッドラヴが早めに先頭に立ち、後半2Fのレースラップはいずれも13秒6を要したものの、
ハッピーマンの追撃を凌ぎ、2016年
リエノテソーロ以来8年ぶりの牝馬Vとなった。1着
ミリアッドラヴがエーデルワイス賞JpnIII、2着
ハッピーマンは兵庫ジュニアグランプリJpnII、そして3着
ソルジャーフィルドがJBC2歳優駿JpnIIIの優勝馬であり、ダート
グレードの意義を強く示す結果だった。
2歳戦に関しては、新ダート体系が2年目に入り、地方競馬にとっても
ネクストスター競走が認知された上で、ホッカイドウ競馬を中心にハイレベルの争いが繰り広げられた。エーデルワイス賞JpnIII・2着の
エイシンマジョリカが、ホッカイドウ競馬所属で東京2歳優駿牝馬に出走するが、
ミリアッドラヴが2歳ダートチャンピオンに輝いたことで、一気にクローズアップされる。
全日本2歳優駿JpnIでは、ホッカイドウ競馬から高知に移籍しての初戦だった
ジュゲムーンが、直線に懸ける競馬で5着に健闘した。ターフチャレンジII(7月24日)で
エイシンマジョリカを退けるなどオープン3勝の実績があっただけに、結果を見れば納得の入着ではあるが、初の長距離輸送で17キロと大幅に馬体重が減った中での好走には驚いた。その1馬身後ろには平和賞を制した
ウィルオレオールが6着と、今年もホッカイドウ競馬でデビューした馬たちの頑張りが顕著だった。
3歳以上のダート
グレードは、原稿を書いている段階で名古屋大賞典JpnIII、兵庫ゴールドトロフィーJpnIII、そして東京大賞典GIが残っている。
東京大賞典GIは、何と言っても
フォーエバーヤングと
ウシュバテソーロ、そして
ウィルソンテソーロの対戦は、新ダート体系最初のシーズンにおける締め括りとして、大いに盛り上がりを見せるだろう。
また、JBCスプリントJpnIでは
チカッパが惜しくも2着に敗れたが、3歳短距離路線を整備した最初の
グレード(北海道スプリントカップJpnIII、東京盃JpnII)ウィナーとしての存在をアピールした。ダート短距離はJRAでも体系が薄いカテゴリーであり、特に3歳馬に活躍の場ができたことを、
チカッパが証明した。これは、来年にも大いにつながる結果と言え、3歳ダート三冠とともに、短距離路線への関心はさらに高まるだろう。
新ダート体系は、2028年から段階的に国際化を目指すなど、さらなる進化を遂げなければならない。その上で、ダート
グレードが常にハイレベルなメンバーで争われなければならないし、その図式がJRA所属馬の独占ではなく、地方所属馬の頑張りがファンの目を地方競馬に向ける機会でもある。
シルトプレ(北海道)がエルムステークスGIIIとJBCクラシックJpnIで入着したことで、
ベルピットのダート
グレード参戦を待ちわびたファンは少なくない。また、
キリンジがJBCクラシックJpnIで3着に健闘した後、園田金盃でも3着に敗れたとはいえ、兵庫のビッグレースに関心が集まった。地元重賞にとどまらず、全国に羽ばたくことで、各地の地方競馬をアピールできる。
ホッカイドウ競馬の2歳戦がハイレベルであることを知ってもらうきっかけは、
ヤマノブリザードの札幌2歳ステークスGIII制覇(2001年)に始まり、
アローキャリーがJRA移籍後に桜花賞GIを制し(2002年)、そして
コスモバルクが北海道に籍を置いたままビッグレースに挑戦したことから始まった。
高知も賞金が厳しい時代からダート
グレード挑戦を積極的に行い、その代表的な存在として
グランシュヴァリエが挙げられる。2010年マイルチャンピオンシップ南部杯JpnI・3着や2011年JBCクラシックJpnI・4着など、ダート
グレードで6回の入着(5着以内)がある。地元に戻れば王者となり、その
グランシュヴァリエと互角に戦える馬を……と、他陣営も実力馬の移籍を行うようになった。それが底上げとなり、早い段階から遠征のノウハウを会得した陣営が、新ダート体系で活躍している。
私が常に「挑戦なくして強い馬は出現しない」と言ってきたことは、この流れを見ているからこそ。その意味でも、
イグナイターがドバイ、
ライトウォーリアが韓国へ挑戦した2024年は、地方競馬にとっても大きな1年だったと言える。
(文:古谷剛彦)