チャレンジできる環境をそろえた経営者のサポートがあれば、誰にでも無限の可能性が広がっている。
北海道・新ひだか町で競走馬の育成、※コンサイナー業務を行い、2023年に法人化した株式会社
ラフメットの松尾篤代表は高校卒業後、すぐに北海道に渡って総合牧場で勤務。繁殖、育成、調教、種付けをこなし、幅広い経験を持つホースマンだ。その豊富な知識と誠実に1頭、1頭と向き合う丁寧な仕事ぶりで、開業3年目にして新たに馬房を借りるほどに、馬主をはじめ、関係者の信頼を得ている。
集まってくるのは馬だけではない。
ラフメットで働く松永美幸さんと石川仁さんも松尾代表の人柄や仕事ぶりに憧れて入社した。神奈川県で事務職をしながらファンとして競馬に興味を持った松永さんは、“自分に馬乗りは務まらない”と生産牧場で働くことをイメージ。ところが
ラフメットで職場体験をすると「ここで働きたい!」と決意した。
最初は寝わら上げなどの作業から始め、少しずつ馬とふれ合う業務を増やし、働き始めて2年目の昨年はセリで馬を引くこともできた。「最初の頃は馬が全然、言うことを聞いてくれず難しかったです。馬は話すことができないので、読み取るのが難しいですけど、馬のひき方から丁寧にひとつずつ教えてもらいました」と松永さんは充実した表情を見せる。
馬乗り以外のほぼ全ての業務をこなす彼女は、
ラフメットになくてはならない存在になっている。「馬に乗れないからこそ、それ以外のところで求められる存在になりたい」。今では馬主などに報告するための写真撮影も担当し、「セリの写真と比べてもひけを取らない」と調教師が言うほどの腕前に。褒めてもらったこともやりがいに感じながら、シャッターを押している。
牧場生活が長くなれば、関わってきた馬がJRAのレースや地方重賞を勝つ機会が増えてくる。「携わってきた馬の結果が見えてきて、休養で帰ってきた時には『おかえり』って気持ちになる。ファンの時に見ていたのとはまた違った世界。馬との関わり、勝った時の喜びが全然違う」。体力が必要な肉体労働。覚悟して馬の世界に飛び込んだが、「自分が思い描いていた牧場生活よりもはるかに色々な経験をさせてもらって、楽しい」と想像を越える牧場ライフを送る松永さんの言葉の端々には“この世界に挑戦して良かった”という思いが伝わってくる。
続いて石川さんは滋賀県の湖南馬事センターで半年間の研修を終え、4月に入社した新人。興味を持ったきっかけは、
ラフメットの開業当初から密着するブルーノ・
ユウキさんのYouTubeチャンネルだった。
職場体験で来場した際に「実際にお話して篤さんについて行きたいと思いました。馬に対してストイックで真剣。ホースマンとして自分がこうなりたいと思えたのが大きかったです」。現在は騎乗もするが、主に馬を扱う技術や
スピードアップに取り込む日々。松尾代表は「馬を扱っている時に馬がどう考えていて、今はこういう状況なのかというのを分かってほしい。そこを勉強するには乗るだけではなくて、普段の扱いからしっかり覚えてもらって。馬に乗った時にはそこを感じながらやってもらえればいいと思う」。
騎乗スタッフが多いに越したことはない。それでも石川さんの今後を最優先に考え、“
ラフメットの考えだけに凝り固まらないように”という意図と馬乗りの技術向上のため、知り合いの牧場で騎乗する機会もつくりながら焦らずにひとつずつ階段を上っている。「ゼロからアド
バイスをしてもらっているので、毎日ありがたいと感じています」。石川さんは感謝の気持ちを持ちながら、一人前になるために汗を流す。
“馬作りは人づくりから”という言葉があるように、職場環境も重視。代表の従業員には体のメンテナンスをしてほしいという思いから新冠町の『椎名はりきゅう整骨院』で月2回、無料で施術を受けられる珍しい試みも取り入れている。
さらに今後、従業員が増えることを見越して社宅の建築にも着手中。新たな生活を支える準備が着々と整えられている。「代表が真面目な方で本当にやる気があれば、何にでも挑戦できる環境。馬の業界で頑張っていきたいと思う方がいれば、一緒に頑張ってもらえると思います!」と競馬の世界に未経験で入った松永さんも働きやすさや環境には太鼓判を押す。
最後に松尾代表は「自分も素人から始めたので、全く馬を触ったことがなくても、やる気次第では、ここまでやれるよって話はよくしています。未経験の人の気持ちを分かってあげられる部分はあるし、少しでも興味を持っていただけのなら、ご連絡をお待ちしています」と競馬業界に興味を持つ人へ向けてメッセージを残した。(中央競馬担当・浅子 祐貴)
※コンサイナーとはセリに向けて馬体を仕上げたり、人間とのコンタクトを教えるなどの業務