「CBC賞・G3」(10日、中京)
馬具で競走馬のパフォーマンスは大きく変わる。関屋記念で2着同着に好走した
ボンドガールはその好例となった。前走のヴィクトリアM16着から鮮やかに巻き返したが、これは陣営の工夫があってこその反撃だった。
テンションが上がり過ぎないように返し馬を行わないこともその策の一つだろうが、調整やレースで「
ユニバーサルビット」と呼ばれる特殊なハミを採用したことも大きかった。このハミの変更で騎手の指示がより明確に伝わり、馬とのコンタクトが改善された結果、本来の鋭い末脚が引き出された。
馬具を変えただけでいきなり脚が速くなることはない。しかし、
ボンドガールのケースが示すように、ハミの選択はパフォーマンスを大きく左右する。ならばもう一頭、同じくハミの変更で注目したい馬がいる。
23年東スポ杯2歳Sを制し、今年2月の白富士Sを制した
シュトラウスだ。この実力馬も折り合いに課題のあるタイプで前走までは「スリーリングビット」という制御力の強いハミを使用していたが、今回の調整から「ピーウィービット(PeeWee Bit)」というハミに変更している点は見逃せない。放牧先である福島県のノーザン
ファーム天栄でも使用していたハミだという。この聞き慣れない馬具に、個人的にも強い関心がそそられた。
武井厩舎に伺って実物を見せてもらったが、その形状は独特だった。写真を見ればわかる通り、口に入れるハミの部分が細くカーブしており、顎部分にはストラップのようなものがついている。これは馬の舌や歯への圧迫を軽減し、頭を下げやすくする構造だそうだ。ちなみに顎のストラップ部分はハミがずれないためにある物で、制御に直接作用するものではない。武井師は「馬の舌に作用するというより、口角に直接作用するイメージ」と、その特性を説明してくれた。
ピーウィービットを使った経験のある嘉藤師は「馬がガツンと行きたがった時にフワッとさせるきっかけとしてはいいと思います」とメリットを語る。その一方で、「ずっと引っ張るようだと逆効果になるので、乗り手の技術を問われるハミですね」とデメリットも指摘する。そして、「うちの厩舎にいる
コスモアンソロジーはピーウィービットでうまくいったケース。左右のモタれが強い馬などにも効果がありますよ」と成功例も挙げてくれた。
シュトラウスは7月30日の1週前追い切りでは併せる予定の僚馬と離れてしまい、本気でスイッチが入った時のハミの効果を実感するには至らなかった。しかし、最終追い切り、そしてレース本番のCBC賞でどのような走りを見せてくれるのか非常に興味深い。
陣営の狙いは道中で
リラックスさせ、直線で脚を伸ばすことだという。ス
プリント初参戦となる
シュトラウスが、新たなハミで本来の力を発揮できるのか果たして-。予想する上でも楽しみな週末になりそうだ。(デイリースポーツ・刀根善郎)