「秋華賞・G1」(19日、京都)
2番人気の桜花賞馬
エンブロイダリーが早めに2番手に押し上げ、ゴール前で逃げた5番人気の
エリカエクスプレスをかわして2冠を達成。騎乗したルメールは昨年の
チェルヴィニアに続き連覇を決めた。
エリカエクスプレスが踏ん張って2着、後方待機から追い込んだ6番人気の
パラディレーヌが3着に食い込んだ。1番人気に支持されたオークス馬
カムニャックは、直線で早々と失速して16着に大敗した。
これが桜花賞馬の底力だ。
エンブロイダリーがオークス9着からぶっつけのローテでラスト1冠を奪取した。樫のリベンジを果たし、牝馬2冠に導いたルメールは「うれしいですね。オークスは距離が長くて残念だったけど、秋華賞は馬の状態も完璧だったし、勝つ自信がありました」と会心の勝利に笑顔を見せた。
名手の手腕がさえ渡った。五分のスタートから中団外めに持ち出すと、向正面でペースダウンを感じて一気に2番手に進出。「ずっと
リラックスしていた」と完璧に折り合って脚をためると、直線では逃げ切りを図った
エリカエクスプレスを目指して鋭進。「エンジンが掛かるのに時間がかかり、(武)豊さんの馬も伸びていたから心配したけど、最後はすごくいい脚でした」。渾身(こんしん)の左ムチで最後のひと伸びを引き出し、半馬身差の勝利をつかみ取った。
見守った森一師は「大変うれしく思います」と勝利をかみしめつつ、「跳びが大きい馬ですし、ジョッキーが外めをリズム良く走らせてくれました。馬も伸び伸びと走っていたので、これならと。能力を最大限に引き出してくれました」とルメールの好騎乗をたたえた。
オークスで露呈した距離不安を払拭する価値ある勝利。トレーナーは「トレセンに戻ってきてからも落ち着いていましたし、トモや肩回りのボリュームがつき、体高も伸びて一回り大きくなりました。いい夏を過ごせましたね」と心身の確かな成長も勝因に挙げた。
次走については未定だが、今後の選択肢の広がる勝利だったことは間違いない。指揮官が「成長途上で、まだ良くなると思います」とさらなる進化を示唆すれば、ルメールも「きょうは休み明けで2000メートルがぴったり。でも、この落ち着きがあれば未来は2400メートルでも」と距離克服に手応えをにじませた。無限の可能性を秘めた2冠牝馬が、どんな路線でも主役を担っていく。