菊花賞は
エネルジコが勝利し、ルメールが史上初の3連覇を達成した。実は福島県・ノーザン
ファーム天栄も23年
ドゥレッツァ、24年
アーバンシックに続く調整馬3連覇の快挙だ。
「牧場からいい状態で送り出し、それを厩舎でも引き継げたことが大きな要因。3頭がそれぞれ違うローテで勝てたのは、個々の馬と向き合ってきた成果ですし、今後の選択肢も広がる結果になりました」。木實谷場長が胸を張るように、今年も従来とは異なる挑戦だった。春は青葉賞を制しながら、優先出走権を得たダービーをあえて自重。馬優先のローテを貫いた姿勢が秋の戴冠を呼び込んだ。「青葉賞の後に無理しないで我慢した成果だと思っています。レースは使っていかないといけないのですが、改めて馬の成長を促すことの大切さを学びました」とうなずく。
調整の工夫も勝因の一つだ。「前走の新潟記念が初めての前日輸送でイレ込みがキツかったので、今回は当日輸送が可能な栗東滞在を選択しました。パドックの時点で落ち着いて歩けていましたし、一定の効果はあったと感じています」。当日、12キロの馬体減にも不安はなかったという。「どういう馬体がいいのか一概には言えませんが、今回が走れる体だったことは結果が示しています」と満足げに振り返った。
晴れてクラシックホースとなった
エネルジコ。将来の可能性は大きく広がる。「ゲート内の駐立など課題はありますが、まだまだ成長途上。もっと成長させるように取り組んでいきたいですね」と前を向いた。
天栄の秋は続く。今週の天皇賞・秋には
アーバンシックと
ブレイディヴェーグを送り出す。過去7年で6勝(18年
レイデオロ、19&20年
アーモンドアイ、21年
エフフォーリア、22&23年
イクイノックス)と抜群の相性を誇る舞台だ。
「東京の芝二千は
スピードだけでもスタミナだけでも駄目。どちらも兼ね備えながら操縦性も問われる。引退された藤沢和雄先生からも『ここで勝てる馬をつくれ』と言われていました。毎年、目標にしているレースです」と意気込む。
ブレイディヴェーグは適性を見極め、牝馬同士のエリザベス女王杯ではなく、ここを選択した。「東京の芝二千が一番向いていますし、涼しくなって状態も上向き。この強い相手でも能力は互角以上だと信じているので、この馬らしさを発揮してほしい」と期待する。
アーバンシックも虎視たんたん。「宝塚記念後は暑さがこたえている様子でした。立ち上げに時間はかかりましたが、乗り込みを進めてからは順調。2歳の百日草特別で見せた爆発力は素晴らしかったですし、東京の長い直線でどんな脚を使えるか楽しみ」と末脚さく裂のシーンを描いた。
秋華賞の
エンブロイダリー、菊花賞の
エネルジコ、そして天皇賞・秋へ-。現状は伏兵扱いの2頭だが、ノーザン
ファーム天栄の今の勢いなら3週連続の激走があっても驚きはない。 (デイリースポーツ・刀根善郎)