日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は今週は大阪本社の新谷尚太(48)が担当。年内で現役引退が発表され、天皇賞・秋を含め残り3戦を予定している
ジャスティンパレスの担当・池水健児助手(42)に現在の心境を聞いた。
21年9月にデビューした
ジャスティンパレスはこの秋、現役生活の最終章を迎える。担当の池水助手は「ここまでの現役生活で大きなケガもなく、第一線で活躍してくれた。このまま元気な姿で無事にレースに送り届けたいです」と最愛のパートナーを気遣った。
秋初戦の天皇賞は3年連続で参戦。23年はスタートで後手に回りながら直線で鋭い末脚を発揮し、
イクイノックスが刻んだレコード決着(1分55秒2)の2着に追い上げた。昨年も出遅れながらしぶとく脚を伸ばし、勝ち馬
ドウデュースから0秒3差の4着に健闘した。持ち時計は今年の出走メンバーでも堂々トップ。池水助手は「2年続けて勝ち馬が強かったけど(東京は)直線が長く、伸び伸びと走れて最後までいい脚を使える。(結果を見ても)コース相性はいいと思います」と舞台を歓迎する。
過去2年と同じ宝塚記念からの直行ローテ。その前走は10番人気の伏兵ながら3着と地力を証明した。夏場は北海道に放牧に出され、しっかりと英気を養って帰厩。「いい意味で変化することなく戻って来てくれた。春先に比べて落ち着きが出てきたし、(6歳秋でも)衰えた様子もないですよ」と順調ぶりをアピールした。
苦楽を共にした相棒と過ごす時間も残りわずか。貴重な日々をかみしめながら、秋初戦へ万全の態勢を整える。「残り3戦。全て勝てるように仕上げていきたい」と力を込めた。ここから
ジャパンC(11月30日、東京)、有馬記念(12月28日、中山)の古馬王道路線を予定しており、厚い絆で結ばれた人馬の最終章。23年天皇賞・春以来、2年半ぶりの勝利を目指す。
数少なくなってきたディープインパクト産駒では現役唯一のG1馬。引退後は北海道新ひだか町の
アロースタッドでの種牡馬生活が始まる。兄
パレスマリスは13年ベルモントS、14年
メトロポリタンハンデキャップの米G1・2勝。種牡馬として、マイルG1・3勝
ジャンタルマンタルを出している。血統的に日本の馬場への適性が高く、生産地での期待も高まりそうだ。
新たなステージのスタートに向けては「ディープインパクトの後継として、いい子供をたくさん出してほしいですね」。池水助手らしい優しいまなざしで愛馬を見つめながら、2世誕生を心待ちにしている。残り3戦の現役生活を目に焼き付け、産駒の誕生を楽しみにしたいと思う。
◇池水 健児(いけみず・けんじ)1983年(昭58)9月6日生まれ、愛知県出身の42歳。名城大卒業後、北海道浦河町の三嶋牧場を経てJRA競馬学校へ。12年栗東・梅内忍厩舎、16年に日吉正和厩舎の解散に伴い、新規開業の杉山晴紀厩舎へ。20年に無敗で牝馬3冠制覇を達成した
デアリングタクトも手がけていた。
◇新谷 尚太(しんたに・しょうた)1977年(昭52)4月26日生まれ、大阪府出身の48歳。18年5月から園田競馬を担当、同年10月に中央競馬担当にコンバート。前職は専門紙「競馬ニホン」の時計班。グリーンチャンネル「中央競馬全レース中継」のパドック解説を担当。