米国競馬の祭典、ブ
リーダーズC(BC)が2日間にわたって
カリフォルニア州の
デルマー競馬場で開催され、2日(現地時間1日)に行われたメインのBCクラシック(ダート2000メートル)は
フォーエバーヤングが日本調教馬として初制覇。3着に敗れた昨年の雪辱を果たし、ダート世界一の座を手にした。坂井瑠星騎手=栗東・矢作厩舎=は2月のサウジC以来となる海外G12勝目。矢作芳人調教師は同10勝目となった。矢作調教師を長年取材する
ヤマタケ(山本武志)記者が、偉業への道のりを「見てきた」。
衝撃だった。サウジC直前の2月中旬。矢作調教師へのインタビューを行っている時だ。「あんまり競馬が楽しくなくなってきていたんだ」。誰よりも競馬のことを考え、愛していると思っていたトレーナーから聞いた、まさかの言葉に驚いた。
「上がっていく過程の時は楽しくて仕方なかったけどね。燃え尽き症候群というか、勝利が宿命づけられているような感じがなぁ」。今や世界のYAHAGIと言われる第一人者だが、調教師試験には13回落ちた。日本で断トツの17勝を挙げる海外重賞を初めて勝ったのは開業12年目の16年。挫折を繰り返し、力に変えてきたから今がある。
今回は自ら「世界一決定戦」と位置づけたビッグレース。メンバーを見渡し、「強えなぁ〜」とつぶやいた瞬間も笑顔だった。「アウェーで勝つということを常に目標にしている。めっちゃ楽しみ」。壁が高ければ高いほど燃える。この中間は“原点”に戻ったようなトレーナーの表情が印象的だった。
目指す場所があった。米国競馬の年度代表表彰のエクリプス賞だ。21年に
ラヴズオンリーユーで最優秀芝牝馬を受賞した時の光景が忘れられない。「素晴らしいんだよ、雰囲気が。競馬関係者が一堂に会して、発表まで分からないアカデミー賞
スタイル。もう一度行きたいんだ」。思い出の舞台の輪郭も、再びはっきりと見えてきた。
今年3月に開いた厩舎の公式ホームページには、大きな文字で「日本の馬は強い」と書いている。レース後のインタビューでは「やりましたよ、やったよ。ついに取った、アメリカの頂点! やりました」と日本のファンに報告。あんなにうれしそうな表情は久しぶりに見た。これからも世界を舞台に戦う矢作師の姿を追いかけていきたい。(山本 武志)