矢作芳人調教師=栗東=が11月9日、
アンジュプロミス(牝2歳、父
ドレフォン)を送り出した福島2R(芝1200メートル=16頭立て)を勝ち、JRAに海外、地方を含めた通算1000勝に到達した。
誰よりも重みを感じていた。JRAでの936勝に加え、地方では重賞18勝を含む47勝。そして、海外では日本人トップのG1・10勝を含む17勝を挙げる。
「開業した頃(2005年)を考えると、ここまで勝つとはね。本当にBCクラシック以上に実感はわかないけど、感慨深いなんてものじゃない。節目の数字のたびに思うけど、本当に感謝ですよね」
常にベストの選択肢を求め、国内外を駆け巡り、あらゆるフィールドで結果を残してきたからこそ到達した大台だ。
「JRAだけの勝利数も大事だけど、そうなるとBCクラシックだってないわけで、うちとしてはこの記録に重きを置くのは当然です」
数字だけではない。大台到達へ導いたのは厩舎所属の弟子、古川奈穂騎手。先週は同じく厩舎所属の坂井瑠星騎手が騎乗する
フォーエバーヤングでアメリカ競馬の最高峰、BCクラシックも制した。馬だけではなく、人も育てる。今やチーム矢作は間違いなく、日本競馬の中心に立っている。
「弟子にも恵まれているよね。本当に真面目だし。この時代は(弟子を預かるということが)難しい面はあるけど、こうやってできるんだというところを見せたい面もある。ええかっこしいだからね」
開業21年目。一瞬の充足感こそあっても、この数字で立ち止まることはない。
「欲を言えばケンタッキーダービーか凱旋門賞のどちらかを取りたい。あとは、毎年のようにリーディングを目指していきたい。今年もまだあきらめていないしね。この数字で達成感や燃え尽きるなんてことはないですよ」
生粋のホースマンの視線は輝きを増し、さらなる高みを見据えている。(山本 武志)