2000年11月19日、京都競馬場で行われたマイルチャンピオンシップで優勝したアグネスデジタル
今年のマイルCS・G1(11月23日、京都競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・00年のアグネスデジタル(的場騎乗)勝利を振り返る。後方を進んだ13番人気のアグネスデジタルが、ゴール寸前でダイタクリーヴァ(安藤勝騎乗)を一気に差し切り、1分32秒6のコースレコードで芝初勝利をG1で飾った。
どこに、こんな切れ味を隠していたのか…。アグネスデジタルの切れ味は、それほど鋭かった。だれもがゴール前は、ダイタクリーヴァの勝利を信じた。そのときだ。あと200メートルのところから風のように伸びて、並ぶ間もなくかわしてしまった。ついでに「ダート馬」のらく印まで吹き飛ばしてしまう。何と芝の初勝利がG1になった。
ふだん表情をあまり表に出さない的場も喜びひとしおだ。「レース前は、もう少し前につけようと思ったが、ペースが速かったのであの位置で我慢した。残り200メートルの手応えで、これなら届くと思った」ジョッキー生活26年目のベテランはこの翌年、01年2月一杯でムチを置き、調教師転向を明らかにしているが、この日でG1の勲章は13回を数えた。白井調教師(当時)もまた、感激に声を弾ませた。「次週のジャパンCダート(東京・2100メートル)にも登録したが、距離を考えてこちらに。それで結果を出したんだから…。今までで一番、しびれたわ」スペシャルウィーク、
ダンスパートナーなど名馬を育てたトレーナーをも酔わせる劇的な勝利だった。
米国生まれの同馬は99年に栗東・白井寿昭厩舎所属でデビュー。00年マイルCSでG1初勝利を挙げると、翌01年の南部杯を制し、84年の
グレード制導入後では初となる芝とダート両方のG1勝ち馬となった。その後は天皇賞・秋、香港カップ、02年フェブラリーSとG14連勝を達成。03年には安田記念も制した。通算成績は32戦12勝。通算獲得賞金は9億4889万2700円(地方、海外含む)。引退後は種牡馬入りし、14年ジャパンダートダービーを勝った
カゼノコ、09年札幌記念など重賞を3勝した
ヤマニンキングリーなどを出した。21年12月、24歳で天国へ旅立った。