開場間もない栗東CWコースに現れたエイシンフラッシュは、背にしたC・デムーロに従順だった。ハミをかむこともなくゆったりと向こう流しへ向かう。6Fから発進。ペースをしっかり守ってストライドを伸ばしていく。4角手前で鞍上が抑えていた手を緩める。
エアラギオール(5歳500万下)に一気に取りつく。直線の入り口では、内から体半分前に出た。手は動けどステッキは左に逆手で持ったまま。馬が自ら行く気になって素晴らしい末脚を披露した。6F80秒2-37秒0-11秒4をマークし2馬身先着。「グッド。よく伸びたね。いいスピードだよ」。鞍から下りたC・デムーロはもちろん笑顔だ。
昨秋の天皇賞を制した実兄M・デムーロに、この馬のことは入念に“取材”した。「難しい馬だという話だった。ただ、その難しさも、強い馬の中に入れると力に変わるって」。煮えたぎる心を、闘争心に変えることが勝利への鍵だと心得ている。
「先週乗ったとき、角馬場で丁寧にスキンシップをとって落ち着かせていたよ。ああ、兄貴からよく聞いてるんだなあって、感心した」と話すのは久保助手だ。すっかり手の内に入れている。汗も涙も共有してきたスタッフも、納得して手綱を預けられる。
周囲は“打倒オルフェーヴル”の構図でこの馬を見る。けれどC・デムーロは「相手のことは気にしない。この馬の競馬をするだけ」と折り合いに集中する構えだ。全力を発揮させるのに何が最も必要か、よく分かっている。
提供:デイリースポーツ