30日、東京競馬場で行われた天皇賞・秋(3歳上、GI・芝2000m)は、松永幹夫騎手騎乗の14番人気ヘヴンリーロマンス(牝5、栗東・山本正司厩舎)が中団の最内を追走し、直線内を突いて脚を伸ばすと、外から抜け出しを図った1番人気ゼンノロブロイをゴール直前でアタマ差交わし優勝した。勝ちタイムは2分00秒1(良)。さらにクビ差の3着には13番人気ダンスインザムードが入った。今年の安田記念を制した9番人気アサクサデンエン、宝塚記念に優勝した4番人気スイープトウショウの両GI馬が、それぞれ4、5着に入った。
レースは、好スタートを切ったタップダンスシチーを外からストーミーカフェが押さえて先頭を奪い、早々と馬順が決まって前半1000m・62.4秒と緩やかなペース。ダンスインザムードが好位の5番手、その直後にゼンノロブロイがつけ、ヘヴンリーロマンスがその内側でじっと脚を溜める。その後ろにハーツクライが位置し、リンカーンは馬群の最後方の内、スイープトウショウはその外を追走。直線入り口でもストーミーカフェが先頭をキープし、有力馬はまだ後方に位置していたが、直線半ばでダンスインザムードが内から前を捕らえ早めに先頭。ゼンノロブロイが外から必死に並びかけ、さらに、その外からアサクサデンエン、スイープトウショウも追い上げるが、前との差は縮まらない。ゼンノロブロイがようやく先頭に立ったかに見えた瞬間、内に進路を取ったヘヴンリーロマンスがゴール寸前、2頭の間からグイっとひと伸びし、先頭で波乱のゴールに飛び込んだ。
勝ったヘヴンリーロマンスは、父サンデーサイレンス、母ファーストアクト(その父Sadler's Wells)という血統。全兄にJRA現4勝のルポルタージュ(セン7、栗東・山本正司厩舎)、伯父にサウスアトランティック(ブランドフォードS-英G2)がいる。02年デビューし、4戦目で初勝利。条件戦で堅実な走りを続け勝ち星を重ねると、昨年のゴールデンホイップT(準OP)で5勝目を挙げ、続く阪神牝馬S(GII)にも連勝。重賞初制覇を達成した。今年に入り、フェブラリーS(GI)10着など精彩を欠いたが、8月のクイーンS(GIII)2着と復調の気配を見せ、連闘で臨んだ札幌記念(GII)では見事に勝利を飾っていた。札幌記念以来2ヶ月ぶりのレースで、GI初制覇となった。通算成績31戦8勝(重賞3勝)。天皇賞・秋を牝馬が優勝したのは97年のエアグルーヴ以来8年ぶりで、史上12頭目。
鞍上の松永幹夫騎手、管理する山本正司調教師共にこのレース初制覇。JRA重賞は、松永騎手が同コンビで制した札幌記念(GII)に続き今年3勝目、通算は53勝目。山本調教師も、札幌記念以来の重賞制覇で今年3勝目、通算25勝目となった。松永騎手は、イソノルーブルで初GI制覇を決めた91年オークスをはじめ、GI全6勝とも牝馬に騎乗しての勝利で、GI制覇は00年ファレノプシスで優勝したエリザベス女王杯以来5年ぶり。牝馬限定以外のGIではこれが初勝利となった。山本調教師は、84年ハッピープログレスで制した安田記念以来、21年ぶりのGI制覇(通算3勝目)。松永騎手は山本厩舎に所属しており、この師弟コンビによるGI制覇は今回が初めてとなった。