川崎コースとの相性の良さをあらためて見せたアンジュデジール(撮影:高橋正和)
中央5頭のうちダートグレード勝ちの実績がある4頭が単勝5倍以下という拮抗した人気となり、しかし1頭だけ蚊帳の外という人気(34.2倍、6番人気)だったサルサディオーネがレースをつくった。
TCK女王盃に続いて、逃げる可能性のある馬が何頭かいたなかで、ハナをとったのは抜群のスタートダッシュを見せたサルサディオーネ。TCK女王盃では控えて結果が出なかったプリンシアコメータも行く気を見せたが、内外の枠順の関係もあって2番手からとなった。
川崎2100m戦では1周目のスタンド前でがっつりペースが落ちることも珍しくない。実際に一昨年も昨年も4コーナー手前の残り1600mから800mの向正面中間までのラップは13秒台後半から14秒台に落ちて、その4Fぶんのラップ合計は一昨年が56秒0で、昨年が55秒4というものだった(いずれも良馬場)。昨年などは中団にいたヴィータアレグリアがスローペースにしびれをきらしてスタンド前で一気に先頭に立つという場面があり、それをぴたりと追走したワンミリオンスが直線で抜け出した。
しかし今回はそうはならなかった。残り1600mからの1Fこそ14.0だったが、その後は12.4 - 13.0 - 13.5で、合計は52秒9。道中のペースが緩んで最後の瞬発力勝負になれば、距離に不安のある馬でもある程度対応できてしまうことがあるが、今回は中盤でペースが緩まなかったぶん、上り3Fが40秒0とかかって底力が問われるレースになった。
勝ったアンジュデジールは最内枠からのスタートで、川崎の絶好位とされる3、4番手のラチ沿いを追走。じっくりと脚を溜め、4コーナーで外に持ち出して差し切った。TCK女王盃は使わずここが年明け初戦、リフレッシュした効果もあったようだ。昨年3歳時には関東オークスがクイーンマンボの2着で、スパーキングレディーCでは古馬相手に勝利するなど、川崎コースとの相性の良さをあらためて見せた。
逃げたサルサディオーネが粘るところ、わずかにハナ差とらえ、1番人気の面目を保ったのがプリンシアコメータ。先行してこの距離でしぶといところは見せたが、最後の追い比べで伸びきれなかったのは、勝ったアンジュデジール、逃げ粘っていたサルサディオーネよりも1kg重い55kgという斤量の差はあったかもしれない。
収穫があったのは、緩みのないペースであわやの3着に粘ったサルサディオーネだ。昨年秋以降、大きな差をつけられての二桁着順が続いていたが、レパードS2着以来の好走となった。これまでの連対実績が中京、新潟で、事前の調教師コメントにもあったように、左回りでの好走が目立つ。
大井移籍後牝馬同士のダートグレードで3着3回と好走しているわりには7番人気と意外に人気を落としたラインハートも、あとひと押しという4着。中団追走から、上り3Fでは勝ち馬(39秒4)に次ぐ、39秒7の脚を使ってしぶとく伸びた。中央時代は芝の短距離が主戦場だったが、ダートの中距離以上では長く脚を使うことができる。展開やメンバー次第で、いずれチャンスはありそうだ。
残り800mからのペースアップに追走一杯になってしまったのが、差のある5着のワンミリオンスと6着のミッシングリンク。このレース連覇と復活を賭けたワンミリオンスは、馬体重プラス11kgは減っていたぶんを戻したものでポジティヴにとらえられたが、56kgの斤量に加え、前述のように展開が昨年とはまったく違った。昨年、TCK女王盃からこのレースを連勝したときの勢いを取り戻せていない。ミッシングリンクは、3番手外目追走ということでは前走TCK女王盃と同じだが、今回は勝負どころでの手ごたえがまったく違っていた。
ダート牝馬戦線は混沌としてきた。レディスプレリュードを圧勝して、JBCレディスクラシックが直前回避となったクイーンマンボが復帰したときにどうかだが、それがなければしばらくは今回のメンバーで、展開やコース適性次第で勝ったり負けたりということになりそうだ。