2003年秋華賞。スティルインラブが17年ぶりの牝馬三冠馬に
14日に京都競馬場で行われる秋華賞(GI・芝2000m)。今年はアーモンドアイ(牝3、美浦・国枝栄厩舎)が6年振りの牝馬三冠達成を目指し出走を予定している。平成最後の年に史上5頭目の快挙達成となるか。今回は「平成」に牝馬三冠を達成した3頭の挑戦、そしてその栄光の瞬間を振り返る。
■1度も1番人気にならずに牝馬三冠達成
2003年の秋華賞を制したのはスティルインラブ(牝3、栗東・松元省一厩舎)だった。牝馬三冠はメジロラモーヌ以来17年ぶりだったが、メジロラモーヌの三冠目はエリザベス女王杯の頃だったから、秋華賞での達成はスティルインラブが初めてである。
桜花賞とオークスを制し、牝馬三冠への期待が高まった秋。ところが、緒戦のローズSは圧倒的な1番人気に支持されながら、5着に敗れてしまう。スタートで後手を踏んだものの、道中は4番手の好位につけ直線を迎えたのだが、そこから春のような伸びは見られなかった。このころ、調教では走るのを嫌がるような素振りをしていたそうだが、レースでは終始ハミを噛んで行きたがり、それが最後の伸びを欠いた要因のひとつでもあった。キャリアで初めて連対を外したうえに、勝ったアドマイヤグルーヴには約3馬身(0.5秒)もの差をつけられた完敗だった。
そして迎えた秋華賞は、スティルインラブの牝馬三冠とアドマイヤグルーヴの親子3代GI制覇のどちらが果たされるのか、春から続く2頭のライバル対決が注目された。人気も2頭に集中し、前哨戦で先着したアドマイヤグルーヴが桜花賞とオークスに続き1番人気、スティルインラブは三たび2番人気となった。
17番枠からスタートを決めたスティルインラブは、中団の外(10番手)で脚を溜める。このとき、すぐ後ろにはアドマイヤグルーヴが付いていた。1000m通過が59.8秒という平均ペースのなか、3コーナーを過ぎて前が落ち着きそうだと感じた幸騎手は、早めに動き出す。ここでもアドマイヤグルーヴがあとに続いている。そして6番手で直線を向くと、外から素晴らしい末脚で先行馬を次々と捕らえ、最後にヤマカツリリーを交わして先頭でゴール板を駆け抜けた。
2着は直線を大外から猛追したアドマイヤグルーヴで、その差は3/4馬身。アドマイヤグルーヴには終始マークされたが、幸騎手自身は意識しないようにしていたという。相手は関係なく、彼に初のGI勝利をプレゼントしてくれた相棒が「一番強い」と信じ、「自ら積極的にいった」攻めの騎乗と、鞍上の思いに応えたスティルインラブの粘りの走り。それは、史上2頭目の牝馬三冠誕生にふさわしいものだった。