横山典弘騎手騎乗のサクラローレルがV、この年の売上はギネス記録の875億104万2400円(撮影:下野雄規)
この年の注目は、何と言ってもサクラローレル。天皇賞・春でナリタブライアンをねじ伏せると、秋緒戦のオールカマーも快勝。天皇賞・秋は3着に敗れていたが、騎乗した横山典弘が「最高に下手に乗った」と認めるほどスムーズさを欠いたもので、この馬が現役最強であることは疑いようがなかった。
2番人気は前年の覇者であり、天皇賞・秋でサクラローレルに先着していたマヤノトップガン、3番人気に上がり馬マーベスサンデーが続く。
サクラローレルが注目を集めたのは、単に強いという理由からだけではなかった。翌年2月に勇退を迎える境勝太郎調教師の管理馬であったのだ。強気なコメントで「境ラッパ」と親しまれた伯楽の悲願が、有馬記念のタイトルだった。
ヒシアマゾンの出遅れで場内がどよめく中、ハナを切ったのはカネツクロス。マヤノトップガンが2番手を追走し、ファビラスラフイン、マーベラスサンデーと有力馬たちが好位を占める。
天皇賞・春では後方からの競馬で直線も包まれてしまったサクラローレルだが、このレースは6番手を追走。3〜4コーナーで外に出すと早めに追い上げを開始する。マヤノトップガン、マーベラスサンデー、サクラローレルが並ぶ形で4コーナーを回り、上位人気3頭による名勝負の予感に沸く場内。しかし、マヤノトップガンがいち早く脱落し、2頭の一騎打ちになると、外サクラローレルがマーベラスサンデーをねじ伏せてゴールに飛び込んだ。まさに正攻法。まさに横綱相撲。
レース後の勝利ジョッキーインタビュー、「強い勝ち方が出来ましたね」の問いに「そうですね。強い馬ですから」と答えた横山典弘。その表情は、引退する師への餞となる勝利でサクラローレルの強さを証明した充実感に満ちていた。
この有馬記念の売上875億104万2400円は、1レースの売り上げ最高記録としてギネスブックにも掲載されている。まさに空前の競馬ブームが、ひとつのピークに達した瞬間でもあった。