今年からリステッド競走が新設され、出走ボーダーラインも1600万円とやや高めな一戦となった今年の桜花賞。そんななか前哨戦で好走して本番へ挑む馬たちとコンビを組むパートナーのなかには、悲願のJRA・GIタイトル獲得がかかる騎手も。そこで今週は今なお活躍する現役ジョッキーのなかで、JRA・GI初制覇を桜花賞で飾った騎手たちをご紹介していきます。
■急遽前日に乗り替わりで臨んだ大舞台
ミルコ・デムーロ騎手の弟として知られるクリスチャン・デムーロ騎手は2009年にイタリアでデビュー。そこから2年後の2011年1月に、NARの短期免許を獲得し船橋競馬場で日本での初騎乗を迎えると、2戦目でいきなり初勝利。翌月には東京競馬場でJRAでの初騎乗も果たした。
そして日本での初騎乗を果たした2011年から、8年連続で日本での騎乗を続けてきたC.デムーロ騎手は、当時20歳だった2013年の桜花賞で、JRA・GI初制覇を成し遂げる。
この年の人気馬には、武豊騎手が騎乗したクロフネサプライズや兄M.デムーロ騎手のレッドオーヴァルが挙がっていた。C.デムーロ騎手が騎乗するのは、前走チューリップ賞3着のアユサン。当初鞍上を務める予定だった丸山元気騎手が落馬負傷のため、急遽前日に乗り替わりが決まり、これが初めてのコンビ。単勝オッズでは7番人気となっていた。
7番枠からゲートを出たアユサンとC.デムーロ騎手は、馬群が固まった中団を進む。そこからやや離れた後方に、M.デムーロ騎手とレッドオーヴァル。第4コーナー手前でクロフネサプライズが先頭に立つと、アユサンはメイショウマンボを外に見ながら最後の直線へ。
直線でサウンドリアーナの外目に進路をとったアユサンは、C.デムーロ騎手のムチに反応すると各馬を交わして先頭に。すると後方に待機していたM.デムーロ騎手のレッドオーヴァルが鋭く迫ってくる。勢いでは交わされるかと思われたところで、C.デムーロ騎手とアユサンが食い下がる。100mほど続いた熾烈な追い比べは、最終的にアユサンがもう一伸びしてレッドオーヴァルをクビ差退けての優勝。
デムーロ兄弟のデッドヒートは、今でも記憶に残る一戦となった。ゴール後、パートナーの首筋をポンと叩き、満面の笑みで兄に喜びを伝える弟。イタリアでは既にリーディングを獲得していた弱冠20歳の若武者が、日本でも存在感を示した瞬間だった。