人気を集めた2頭の決着にはなったが、敗れたインティのほうには誤算が2つあった。

　ひとつはスタートで後手を踏んだこと。そうなるとインティより外枠でもドリームキラリが行く気を見せてハナを取り、コウエイエンブレムにまで先に行かれてしまった。むしろ最近スタートで遅れなくなってきたゴールドドリームのほうが好スタートを切り、3番手につけたインティをすぐ前に見る位置での追走。ただ流れが速かったわけではなく、インティは1コーナーを回るあたりから向正面まで行きたがっているようだった。

　もうひとつの誤算は向正面。6番手あたりを追走していたオールブラッシュが外から一気に進出してきたこと。田辺騎手は、向正面からまくって行って勝った浦和記念と同じように一発を狙ったのかもしれない。すぐ前にいたゴールドドリームが一瞬つられそうになったが、思いとどまった。

　一方でインティはまくり切られてしまえばますます自分の形ではなくなり、オールブラッシュを行かせないように一緒に動くしかなかったのだろう。それで一気にペースが上がった。残り600mから3コーナーあたり、インティが一気に先頭に立ったところで、ハロンごとのラップがもっとも速い11秒8を刻んだ。インティはそこで脚を使ったぶん、ゴール前でやや脚が上がってしまった。逆にゴールドドリームにとっては末脚が生かせる展開になった。

　勝ちタイムは稍重で1分40秒2。かしわ記念で1分40秒台の勝ちタイムは、まだ格付がGIIIだった2000年にビーマイナカヤマが勝ったとき以来。ただ人気2頭が1、2着で、さすがにレベルが低かったということではない。1分35秒や36秒台が出ていた2010年前後と違い、近年の船橋は時計がかかるようになって、2016年から昨年まで過去3年の勝ちタイムは1分39秒台。

　勝ったゴールドドリームのルメール騎手が「馬場が重かったので追い出しを我慢して、ラスト300mだけ脚を使いました」ということを話していたように、今回は稍重でも時計のかかる馬場だった。そのことでも、早めに仕掛けたインティと、追い出しを待ったゴールドドリームで明暗を分けることになった。

　ただあそこでインティが突っ張らずにオールブラッシュを行き切らせてしまえば、そのまま押し切られてしまう可能性もあり、インティにとってみれば行かざるをえなかったということはあった。そういう意味でも、勝敗のカギはオールブラッシュにあったといってもいいかもしれない。

　3着に入ったのは、グレードタイトルがないドリームキラリよりもなぜか人気がなかったアポロケンタッキー。ときに、道中追い通しでまったく見せ場なしということもある難しい馬だけに敬遠されたのかもしれないが、それにしても船橋コースはよく走る。ここまでは4戦してオール連対で、今回は3着だったが、さすがに2強の壁は高かった。中団よりうしろからの追走だったということもあるが、メンバー中最速の37秒6で上がって、2着インティとの差を2馬身まで詰めた。

　2年前に船橋に移籍して以来、初めて地元での出走となったキタサンミカヅキは5着。船橋で出走していないのには理由があって、船橋では重賞級のレースで1200/1400mの設定がない(できない)ため。

　ゴールデンウィーク中でファンもたくさん来場する地元最大のレースゆえの出走ということはあったようだ。9歳にして生涯3度目となる慣れない舞台で、このメンバーを相手に勝ち馬から1秒1差の5着は健闘といっていい。