ゴール前は3頭横並びの大接戦も、制したのは地元のメイショウアイアン(撮影:田中哲実)
前日からこの日にかけては馬が走ったあとに砂埃が舞い上がるほど乾いたタフな馬場。勝ちタイム1分12秒8という決着は、昨年も2着に健闘していたメイショウアイアンに少なからず味方したことだろう。
いつもながら抜群のスタートで逃げたのはマテラスカイ。それほど気合を入れずとも3〜4コーナーでは後続との差を広げにかかった。前半3F通過34秒8は、馬場を考えれば速い。
マテラスカイは直線を向いても単独先頭。スタート後は4番手も中団まで位置取りを下げていたメイショウアイアンが4コーナー手前で外からまくるように位置取りを上げ、3番手につけていたスズカコーズラインも進出。それでも残り100mあたりまではマテラスカイが逃げ切ったかに思えた。しかしそこから2頭が徐々に差を詰め、3頭並んだところがゴール。レースの上り3Fは38秒0とかかったが、マテラスカイはバテて止まったというほどでもない。
写真判定の結果、メイショウアイアンがハナ差先着。マテラスカイとスズカコーズラインは2着同着という際どい決着だった。
メイショウアイアンは9歳だった昨年が2着。やはり中団の外から3〜4コーナーでまくってきて、勝ったヤマニンアンプリメに3馬身差の2着。地方の9歳馬がダートグレードで2着なら、見ているほうとしては大健闘という感想だが、デビュー2年目(当時)の落合玄太騎手には「もっと際どい勝負ができたかも」という悔しい2着だった。その悔しい経験があっての今年。砂をかぶるのをいやがるこの馬にとって、去年も今年も外目の枠はむしろ幸運だった。今回も4コーナー手前から強気に攻めていって、冒頭のとおり、力のいる馬場も味方になった。
それにしても10歳馬。名は体を表す、まさに“アイアン”ホース。直線での力強い走りは、ちょうど20年前、札幌1000mが舞台だったこのレースを12歳(当時の表記では13歳)で制したオースミダイナーのレースぶりがフラッシュバックした。
それで今回、まことに残念だったのは無観客だったこと。オースミダイナーが先頭でゴールに向かっていく直線では「ぐぉーーーっ!」という歓声が上がったが、今回ばかりはその歓声もない。それでもレース直後の検量室前で、関係者は相当盛り上がっていたらしい。
昨年はこのレースのあとにグランシャリオ門別スプリントを制し、10月の道営スプリントでもきわどい2着。半年ぶりとなった今シーズン初戦のレースぶり(3着)を見ても衰えはないと思い、それでもさすがに予想では△までだった。
メイショウアイアンの中央時は準オープンで3着(6歳12月)が最高という成績。それでいて10歳になって、中央の重賞・オープン実績馬と互角に戦い、勝ちきったのは、これがダートグレード5勝目という田中淳司厩舎の厩舎力だろう。これまでの4勝はいずれも2歳戦だったが、ホッカイドウ競馬で古馬の交流重賞制覇はすばらしい。
あらためて10歳でのダートグレード制覇ということでは、やや暴論を承知で言わせてもらえば、たとえ今年地方馬がJBCスプリントを勝つことがあっても、メイショウアイアンがNARグランプリの最優秀短距離馬を受賞してもいいのではないか。それくらいに殊勲の勝利だった。
なお北海道スプリントカップの売上、5億4096万4400円は、ホッカイドウ競馬の1レースあたりのレコードを更新。コロナ感染防止の規制が徐々に解除されているとはいえ、夜遊び自粛ムードという状況での地方競馬のナイター開催は強い。