完璧なレース運びで完勝したレーヌブランシュ(撮影:高橋正和)
JRA勢対、史上2頭目の南関東三冠を懸けるアクアリーブル。その挑戦を一身に受けたアクアリーブルは、堂々と渡り合っての2着。負けはしたものの、見事な戦いぶりだった。
レーヌブランシュが押してハナを取りに行く勢いだったが、外のアールクインダムの勢いを見てラチ沿い好位に控えた。アクアリーブルはアールクインダムの直後の外でマーク、ほかの中央2頭も続き、序盤から中央4頭とアクアリーブルが前で互いを意識しながらレースが進んだ。
流れがあまり緩むことがない緊張感のあるレースをつくったのはアクアリーブルだった。川崎2100mでは、1周目のスタンド前でがっつりペースが落ちて14秒台のラップが続くこともめずらしくないが(距離経験が浅い関東オークスでは特に)、アクアリーブルがアールクインダムの尻を突いてペースを落とさせなかった。それゆえ掛かる馬も、動いてくる馬もいない。ハロンごとのラップは次のとおり。
6.3- 11.1- 12.5- 13.7- 13.2- 13.9- 14.2- 12.1- 12.9- 13.5- 12.9
13秒9、14秒2とペースが落ちたのは、残り1200mの最初のゴール板から向正面までの2Fだけ。
そこで後方から一気に動いたのが森泰斗騎手のテーオーブルベリーだったが、先行集団に取り付く前にペースアップされてしまった。まくりきらずとも先頭に並びかけるあたりまで行ければ、勝てないまでもレースを動かすことになったが、結果的に早めに動くという“賭け”は成功しなかった。
そして4コーナー手前、アクアリーブルは前のアールクインダムをとらえるだけ。直線を向いて一瞬先頭に立った場面では、おっ!と思わせる場面があった。
しかしレーヌブランシュのレース運びは、これ以上ない完璧なものだった。まずはスタート後に控えてラチ沿い3番手につけたこと。コーナーがきつい小回りの川崎コースではベストポジション。馬群の内は勝負どころで内に包まれて出られなくなるリスクもあるが、4コーナーではすぐ外にいたクリスティがすでに追い通しで、レーヌブランシュはこれを外に弾き飛ばすように進路をつくった。アクアリーブルも十分に脚を残していたが、これを並ぶ間もなく交わし去っての完勝。まるで鞍上が川崎コースを熟知していたかのよう。
この春、JRAの牝馬二冠を制するなど絶好調の松山弘平騎手の勢いもあっただろうし、すべてがうまく運んでの勝利。前走伏竜Sは5着だったが、スタートで出負けしながら最後までしっかり脚を使って2着争いの牡馬たちとは互角の勝負をしていた。そのときの鞍上、池添謙一騎手の「強い牡馬相手に頑張っているので、牝馬同士ならもっとやれていい」(競馬ブックより)というコメントはそのとおりだった。
レーヌブランシュの父はクロフネ。関東オークスが2000年に中央との交流になって以降、07年ホワイトメロディー、08年ユキチャン、15年ホワイトフーガに続いて、クロフネ産駒の勝利は4頭目。ちなみに今回3着だったクリスティも母の父がクロフネだった。
関東オークスの中央からの出走馬には、今回もそうだったように芝路線からの参戦も少なくない。クロフネ自身も、産駒の傾向もそうであるように、芝・ダート兼用という特徴が生かされているのかもしれない。
惜しくも史上2頭目の南関東牝馬三冠とはならなかったアクアリーブルだったが、みずから勝ちに行くレースをして、直後でマークしていた勝ち馬とのスタミナも要求される瞬発力勝負に負けただけ。相手が強かった。3着のクリスティには4馬身差だから、負けて強しの内容。母のアスカリーブルが、関東オークスを制したあと、牡馬相手の黒潮盃、戸塚記念と連勝したように、中央馬相手のここを経験したことで、さらなる能力アップも期待できる。
クリスティは4コーナー手前で勝ち馬と内外で並んでいたところからの追い比べとなったが、直線を向いて置かれてしまった。初めてのダートに加えて、2100mという距離で最後は余力がなかった。
地方馬ではもう1頭、ルイドフィーネが4着に食い込んだ。ここまでデビュー戦を勝ったのみだが、重賞では勝ちきれないながら崩れることもなく、すべて4着以内という成績を今回も死守した。中央4頭+アクアリーブルという5頭一団の直後を離れず追走し、3着クリスティには直線でも食い下がった。父はサウスヴィグラスだが、母の父がダンスインザダークで、距離には融通がきく。
セランは、UAEオークス3着という看板は立派だが、そもそもUAEでの3歳牝馬は層が薄く、6頭立てだったその着差は、18-1/2馬身、4-1/2馬身、1-1/4馬身、12-1/2馬身、2 1/4馬身と、能力にかなりの開きがあった。加えて地方の深いダートも合わなかったようだ。