これまでの圧倒的な強さを鑑みれば、史上3頭目の無敗の3冠馬誕生は濃厚だが、果たして結果やいかに?(写真はホープフルS時、撮影:下野雄規)
デアリングタクトが秋華賞で無敗の牝馬3冠を達成した。現代競馬は、早くから競走馬のポテンシャルをしっかりと引き出すだけの力を牧場も厩舎も備えており、なかなか典型的な夏の上がり馬が出なくなった。強い馬は最初から強く、その能力ピラミッドは秋まで崩れない。
ということで、今週の菊花賞ではコントレイルが史上3頭目の無敗の3冠に挑む。まずは無敗の3冠馬の歴史を振り返る。1頭目は84年シンボリルドルフ。岡部幸雄騎手(当時)が同じく無敗のビゼンニシキに乗れたにもかかわらず、弥生賞でルドルフを選び、その通りにビゼンニシキを破った。
皐月賞でもビゼンニシキを2着に退け1冠。ダービーでは、勝負どころを焦る岡部騎手に馬が「まだだ」と伝えたという伝説までついて完勝。セントライト記念を楽勝し、菊花賞で8戦8勝、無傷の3冠を達成した。
ルドルフから21年。05年クラシックに降臨したのがディープインパクトだ。新馬戦前の追い切りで武豊騎手が「これは凄い」と目を丸くし、2戦目の若駒Sで大楽勝を収め、早い時期から3冠候補生と目された。
皐月賞ではつまずいて落馬寸前。派手に出遅れたが、ジワジワとポジションを上げて差し切った。ダービーではパドックでやんちゃなしぐさを見せながらも外から楽々差し切り。2冠を手にしたが、ダービーでの振る舞いに危機感を覚えた陣営は夏場、札幌競馬場で折り合いを猛特訓。
秋初戦の神戸新聞杯を制し、陣営は心からホッとした様子を見せた。菊花賞はアドマイヤジャパンの奮闘こそあったが、最後は難なく差し切り。7戦7勝で無敗3冠を手にした。
無敗3冠の父から無敗3冠を引き継ぐコントレイル。まるで漫画のような出来事が起ころうとしている。のちに競馬史の伝説となるであろう瞬間を見届けたい。
(文=スポーツニッポン・鈴木正)