中央の大きな穴がクロコスミア、右側の小さい穴がカワカミプリンセスによるもの(2017年撮影:花岡貴子)
早いもので、もう少しで1月も終わりますね。厩舎の解散は2月末、新規開業は3月1日に行われることが多いので、毎年この時期は何かとばたばたします。特に今年は引退する調教師の方が多く、かなりの従業員さんが厩舎を移動します。
その中で西浦厩舎も2月末を以て解散します。西浦厩舎といえば、ホッコータルマエやカワカミプリンセスを思い出しますが、厩舎解散となると、あのカワカミプリンセスが洗い場の壁に開けた穴がなくなってしまうのかな…と少し寂しい気持ちになります。
カワカミプリンセスが開けた穴とは…。
西浦厩舎の洗い場の後ろの壁には穴がふたつあり、ひとつはカワカミプリンセスが、もうひとつはクロコスミアが蹴って開けてしまったのです。
クロコスミアを担当していた北添助手によれば、
「カワカミプリンセスも気のキツい馬でした。ちょうど壁を蹴って穴をあけたとき、僕はたまたま近くで見ていたんです。それから何年か経ってクロコスミアが2歳のころ、その壁にカワカミプリンセスと同じように蹴って、しかもカワカミプリンセスより大きな穴をあけてしまったんです。そのとき、とっさに“あの強い牝馬と同じことをした!?”と思いました。すごく印象深かったです」
厩舎が解散すると、その場所は修繕作業に入るため、かつての面影はなくなってしまうことがほとんどです。まして、穴なんて当然のように塞がれてしまうことでしょう。身長を記録した柱の傷、ではないけど、厩舎の解散は同時に名馬の“跡”が消える瞬間でもあります。残念ですが、やむを得ませんね。いまはコロナ禍で最後にもう一度、その“跡”を見に行くこともできないので、こうやって写真で思い出に浸れるだけでもよかったかな、と思う今日この頃です。
さて根岸Sですが、西浦厩舎からはデザートストームが出走します。
「状態がすごくいいので、無事輸送をクリアしてくれれば。ためるレースをすれば1400mは大丈夫」と伊藤助手。前走のギャラクシーSでは長くいい脚を使って勝ちました。西浦師がかつてカツラギエースでジャパンカップを制した東京競馬場でいいところを見せて欲しいですね。
(取材・文:花岡貴子)