出走馬9頭が横並びのスタートを切った。
3番のグランスピードがじわっとハナに立ち、ショウナンバルディ、1番人気のファルコニア、2番人気のヴェロックスらがつづく。
テン乗りの松山弘平が手綱をとるモズナガレボシは、外の9番枠から出たなりに進み、後方の外目で折り合いをつけた。
「枠もよかったですね。外が伸びる馬場になっていたので、そのへんも意識していました」と松山。
最後方は、武豊が乗る大外10番のスーパーフェザー。
グランスピードが単騎で逃げ、ショウナンバルディが2番手のまま向正面へ。先頭から最後方までは6馬身ほどか。
1000m通過は1分1秒4。
序盤から中盤にかけてはゆったりとした流れになった。が、スローペースに焦れたように、ファルコニア、ヴェロックスらが進出し、途中から一気に流れが速くなった。
「向正面あたりで結構ペースが上がりました。そのへんもよかったですね。脚が溜まりました」
そう振り返った松山のモズナガレボシは、内のスーパーフェザーと併せる形で、まだ後方にいる。
3、4コーナーで、先頭のグランスピードの外にファルコニアとヴェロックスが並びかけ、かわしにかかる。
グランスピードが通っている馬場の真ん中より内は芝の傷みが目立ち、外は綺麗な状態だ。
3、4コーナー中間地点で、武は一発を狙ったのだろう、スーパーフェザーを内に誘導し、ショートカットするように前との差を一気に詰め、直線でまた馬場のいい外目に持ち出す戦術をとった。
一方、松山は、前で主導権争いをする馬たちの外に持ち出し、直線に入った。
スーパーフェザーが馬場の真ん中から先頭に躍り出た。
武マジック炸裂か、と思われたが、外からヒュミドールとモズナガレボシが凄まじい脚で追い込んでくる。
内のヒュミドールと外のモズナガレボシが激しく叩き合いながらスーパーフェザーをかわす。松山のモズナガレボシが半馬身抜け出し、先頭でゴールを駆け抜けた。
「最後にいい脚を使ってくれました。乗りやすい馬です。道中も楽で、やりたい競馬ができました。賢い馬です」
そう話した松山が、途中から速くなった流れと枠を味方につけて力を引き出し、グランプリボス産駒によるJRA重賞初制覇をやってのけた。
(文:島田明宏)