母の母ディナシーはセレクトセール史上最高額で落札された
 
 「プロキオンS・G3」(10日、小倉)
 試験勉強は常に一夜漬けで済ませ、授業中は辞書など用いず、サラブレッド血統辞典を読みあさっていた学生時代の私。今思えば、もっと勉強しておくべきだったと後悔しかないが、それでも競馬の仕事で30年近くも飯を食わせてもらっているのだから、あの時間も無駄ではなかったか。
 血統辞典はアアセイコーから始まり、当時の花形はノーザンテースト。マイナー系までしっかりと網羅されており、ハズレ種牡馬と揶揄されたエンペリーやグランディらの存在もこの辞典で学ばせてもらった。
 今回、取り上げた
サンライズウルスは、日本で大成功を収めたヘニーヒューズ産駒。ストームキャット〜ヘネシーと続く米国の
スピードを脈々と受け継いでいる。その半面、母父は日本で期待外れに終わったチチカステナンゴという、何とも面白い配合だ。
 フォルティノ系スマドゥンを父に持つチチカステナンゴは、血統的にも地味な存在であったが、種牡馬として仏ダービー馬
ヴィジョンデタを輩出したことで注目度がアップ。のちに日本に招かれ“非サンデー系”として大きな期待をかけられた。だが、12年に14歳で早世した上、残された産駒からも重賞勝ち馬は出なかった。現段階では、大失敗と言わざるを得ない種牡馬だ。
 ただし、この手のタイプは“母の父”として成功するケースがあり、若くしてオープン入りを果たした
サンライズウルスの活躍次第では、捲土(けんど)重来の可能性がある。もっとも同馬は3代母トゥザヴィクトリーの存在が大きく、その全弟サイレントディールがダートで活躍していたことからも、砂適性の高さは証明済みだ。ちなみに、七夕賞の
ヒュミドール(母父チチカステナンゴ)も重賞Vまであと一歩。隔世遺伝で花開いてほしい。(デイリースポーツ・松浦孝司)