新年明けましておめでとうございます。年始の第1弾として、デビューから数々の記録を塗り替えてきた今村聖奈騎手(19)=栗東・寺島=の新春インタビューをお届けします。女性騎手という注目される立場で、その枠組みを超える活躍を見せてきましたが、人知れず苦悩や重圧と向き合う日々もありました。自らルーキーイヤーを振り返り、20歳の節目を迎える23年への意気込みを熱く語りました。
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-騎手デビューは昨年3月5日の阪神1R。
「すごく特別な日。いい意味で緊張といいますか、ドキドキワクワク。ずっと夢に見た舞台だったので。描いているレースができるのかな、早く1Rにならないかな、どんなことになるんだろう、と考えていました」
-結果は8着。
「気付くと1コーナーで、みんな前にいて。(角田)大河が先頭でゴールしているし、早いな!って」
-デビュー2週目(17戦目)、3月13日の阪神8R。
ブラビオで初勝利を飾った。
「“デビューした日に勝ってやる”って気持ちでした。でも、甘くないし、課題があらゆる所から見つかって。勝てなかったらチャンスは巡ってこないし。デビューの週に、行けなくて無理に出して行って、バタバタになったレースがあって、(
ブラビオも)行ったら同じレースになると思って自信のなさもあって控えました。馬が助けてくれました」
-5月22日の新潟3Rで通算10勝目。女性騎手のデビュー年最多勝利数を更新した。
「塗り替えたら、超せない記録を作ってやろうと思っていました。競馬学校生の時から、“歴史に名を刻めるジョッキーになりたい”と言っていたので。
タマモエイトビートはデビュー週にうまく乗れなくて。続けて乗せてもらったからこそ特徴を生かせました。記録よりも、ひとつの勝利でお世話になった人たちに恩返しできたことが嬉しかったです」
-7月3日のCBC賞は、
テイエムスパーダで重賞初騎乗初V。
「適度な緊張はあったけど、テン乗りなのに不安材料を持たず、自信を持って挑めました。レースは持って行かれて、やばいなぁ、めっちゃ行くなぁと思いながらで…。ゴールの瞬間は嬉しいのと、夢かなと思いました。普段からすごくレースの夢を見るので。すべてがうまく行き過ぎたから、夢見てるのかなぁ?って」
-8月13日のフェニックス賞で特別もV。
「すごく嬉しい1勝でした。斤量の恩恵がない特別レースを勝つことを、目標のひとつに掲げていたので。(堀内)先生から小倉の始まる随分前から新馬戦を頼んでもらっていたので、結果で恩返ししたいと思っていました。全部がうまくいって、メチャクチャうれしかったです」
-JRA通算51勝。デビュー年の50勝到達は、加賀武見、武豊、福永、三浦に続く史上5人目という快挙だ。
「名前を見るだけで背筋が伸びます。トップジョッキーに入れてもらえるぐらいのスタートを切れたことに感謝したいです」
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ホープフルSでは自厩舎の馬でG1初騎乗。
「G1は乗りたくても乗れない。恵まれた環境で乗せてもらっているからこそ。関係者の皆さんに感謝したいですね」
-記録を次々と塗り替えるなか、プレッシャーはなかったのか。
「“何週連続”と報道された時は、これを勝てないとチャンスないかなとか、ゲート裏で余計なことを考えることがありました。でも、ジョッキー人生は長いから、記録が途切れても自分で塗り替えたらいい、もう一度頑張ったらいいと切り替えられるようになった。女性騎手として注目されるだろうけど、そっとしてくれないかなと思うこともありました。贅沢な悩みですけど。今は慣れて次は何の記録だろう?と思うようになりました」
-1年で変わったことは。
「レースに対する考え方。勝つためにどうするべきか。(福永)祐一さんに教わって変わりました。一点集中じゃなくて違う視点で見ることができる。たくさん乗せてもらったからこその慣れだと思います」
-その福永騎手は2月末で引退。調教師に転身する。
「デビューした時から、丁寧に教えてもらって“聞くのもあと何年かだけやで”とおっしゃっていたので。ひとつひとつの時間を大切にしたい。祐一さんが調教師になって騎乗依頼をもらえたら、自分へのご褒美になると思います」
-入退院を繰り返していた祖父が元気になったと聞く。
「家が阪神競馬場の近くで、連れて行ってもらったり、可愛がってもらって。生死をさまようぐらいで長くないと聞いていました。何か勇気づけられることができたらと思っていたけど、私がデビューしてから見違えるほど元気になって。園田で乗る時は見に来てくれています。自分の頑張りが励みになると思うと、嬉しいです」
-ベストレースは。
「改めて全レース見たけど、ないんです。褒められたり、嬉しいとかはあっても、単純なレースばかり。今年は見つけたいです」
-今年の目標を。
「競馬学校の先生から“理想が高過ぎて階段を踏み外す”と言われて。性格的に目標は掲げないんです。たくさんの方に恵まれて、たくさんの馬たちが教えてくれているからこそ、今があると思っています。51勝のうち、うまく乗って勝てたのは半分以下。勝てなくても納得してもらえる、自分も納得できるレースを増やしたい。そのために準備しないといけないこともある。それが昨年の反省でもあり、今年の抱負です。あとはケガなく1年を終えることですね」