地元のエースとして期待されるパッションクライ(撮影:田中哲実)
「ホッカイドウ競馬は2歳馬のレベルが高い」というのは客観的な事実だが、昨年までと砂が変わり、タイム水準が変わった今年の場合は、例年の世代と比べてどうなのかが分かりづらい。よって、他流試合の結果をもとにした、他場の2歳馬との力関係を判断材料にするしかないのだが、ワンツースリーを決めた平和賞を筆頭に、あらゆる競馬場で門別からの遠征馬がほぼ「無双」に近い結果を残していることを考慮すると、今世代のレベルは推して知るべしであろう。
今回の門別勢の主力は、前哨戦であるサンライズCの上位3頭、パッションクライ、ブラックバトラー、ダバイエスペランサである。後に鎌倉記念を勝つサントノーレ、平和賞を勝つカプセルをブリーダーズゴールドジュニアCで下したのがブラックバトラーで、2戦2勝での重賞制覇は大物感を感じさせた。それをサンライズCで破ったパッションクライの実力は、言わずもがなである。やはり地元のエースはこの馬だ。ペースの緩急を問わないセンスの良さは、中央馬相手でも武器になるはずである。もちろん、展開がもつれれば、ブラックバトラー、ダバイエスペランサにもチャンスはある。サンライズCは砂を被って戦意喪失してしまったインテンシーヴォも、スムーズならもう少しやれるはず。2020年のこのレースで2着だった兄トランセンデンスのように、穴メーカーになるかもしれない。
対するJRA勢も、今年はなかなかスケールの大きい馬が多い。サンライズジパング、フォーエバーヤング、エストレヤデベレンの3頭は特に勝ち方が優秀だ。ただ、いずれも道中は若さを覗かせており、エストレヤデベレンの初戦に関しては少頭数が奏功した感もある。例年、このレースは出入りの激しい展開になるため、人気のJRA勢がキャリアの浅さを露呈して負けてしまうパターンも少なくない。ダート3冠競走の開幕目前とあって、例年以上に素質馬が参戦してきた印象だが、2歳の現段階では、完成度という点で地元勢に分があるのではないかと筆者は考えている。
(文:競馬ブック・板垣祐介)