「NHKマイルC・G1」(11日、東京)
3連単150万円超の大波乱を演出したのは、9番人気の伏兵
パンジャタワーだ。大外から鮮やかに差し切り、G1初制覇。
タワーオブロンドンの初年度産駒で、父に初のG1タイトルをもたらした。管理する橋口慎介調教師(50)=栗東=は父の弘次郎元調教師(79)との親子同一G1制覇を達成した。2着には3番人気の
マジックサンズ、3着には12番人気の
チェルビアットが入った。1番人気の
アドマイヤズームは14着だった。
ゴールした瞬間、鞍上に勝利の確信はなかった。内と外に離れての際どい勝負。中団からレースを進め、直線で外へ出して鋭い末脚を発揮した
パンジャタワーか、それとも最内から猛追する
マジックサンズか-。頭差で先にゴールしたのは9番人気の伏兵だった。
3連単150万円超の大波乱を演出したG1初制覇。「最後は必死で、勝ったか分からないくらい無我夢中だった。勝ったと分かってこみ上げてくるものがありました」と松山。リズムを大事にして武器である末脚を生かす競馬を心がけ、相棒がそれに応えてくれた。
鞍上にとっては4年ぶりのG1制覇で、区切りとなるJRA重賞50勝。ただ、そこに特別な感情はない。「自分のことより、
パンジャタワーと大きいところを勝てて、昔からお世話になっている橋口先生とG1を獲れたのがうれしいです」と喜びをかみしめる。23年に解散した池添兼雄厩舎で厩務員と助手を務めた橋口師と、同厩舎で騎手としてデビューした松山。同じ釜の飯を食べた間柄だけに、うれしさは格別だった。
今回鍵となったのは距離。マイル戦の朝日杯FSでは12着に敗れており、そこが課題だった。橋口師は「この中間は馬場での追い切りを増やし、最終追い切りも栗東CWで行いました」と、マイルに対応できるように調整を工夫してきた。これまで千二と千四しか勝利がなかった
パンジャタワーだが、見事に進化し、距離を克服した。
またハーツクライなどの名馬を手がけた元調教師の父・弘次郎氏も06年のNHKマイルCを
ロジックで制覇しており、偉大な父との“親子同一G1制覇”となった。父が現役中も仕事の話はほとんどすることなく、その背中を見てきたといい、「父が引退した日にしみじみと、『満足した、悔いはない』と語っていたのが一番、印象に残っている。このような気持ちで引退できたらなと思いました」。そんな尊敬する父にうれしい報告ができるのは、この上ない喜びだ。
パンジャタワーの次戦は未定だが、マイルのG1を勝ったことにより、今後の選択肢が広がった。鞍上は「距離は千二から千六まで対応できるし、馬もまだまだ成長してくれると思う」と期待を込めれば、指揮官も「今回はマイルのG1を速い時計で勝ってくれた。これからの馬でもっと強くなると思っています」とうなずく。3歳マイル王の座を射止めた素質馬が、今後どの路線でどんな活躍を見せるか、目が離せない。