14年の有馬記念を観戦した長嶋さん(中)(右は西川賢オーナー、左は後藤元理事長)
競馬界も長嶋茂雄さんの死去を悼んだ。本紙でG1コラムを連載中の中山馬主協会会長の西川賢オーナー(歌手としては山田太郎の芸名で活動)は、14年の有馬記念で長嶋さんが中山競馬場に来場した際の秘話をつづった。
長嶋茂雄さんとは長年お付き合いをさせていただき、素晴らしい思い出ばかりでした。世間では天真爛漫(らんまん)なイメージの長嶋さんですが、とにかく人をほめたり、立てたり、すごく気配りをしてくださる方でいらっしゃいました。
昔、ハワイから帰る飛行機でたまたま隣の席になったことがありました。私はあまりお酒を飲まない方なのですが、「ワイン飲みますか? 私の頼むワインは最高ですよ!」なんて言ってキャビアなども頼んでくれて、9時間寝るはずが一睡もせずに帰りました。
サインを頼まれる姿を見て、うちの息子がファンだからと私もお願いすると、「山田太郎様」という宛名と自分の
サインを同じ大きさで書いてくれたのです。普通は自分の
サインを真ん中に大きく書くところ、気配りというか勉強になるなと感銘を受けました。
14年の有馬記念にいらっしゃったのは、親交の深い里見治オーナーとの食事会で競馬の話題になり、長嶋さんをお誘いしたところ、「ぜひ行きたいです」とおっしゃったからです。当協会の馬主役員室からご覧になっていて、レース前の盛り上がりに「すごいですね。なんの騒ぎですか?」と外に出られたので、私が機転を利かせて許可をもらい、放送局に伝えるとともに当時の後藤正幸理事長に大急ぎで来てもらい、あのワンシーンになったのです。筋書きにない特別な演出で、本当にいい思い出です。
日本一の
ビッグスターであった長嶋さん。心よりご冥福をお祈り申し上げます。(中山馬主協会会長)
○…長嶋さんは14年に中山競馬場で有馬記念を観戦した。ターフビ
ジョンに姿が映し出されると大歓声がわき起こり、ミスターは手を上げて応えた。レースでは自身と同じ2月20日生まれの
ジェンティルドンナが優勝し、競馬を楽しんでいた。