「凱旋門賞・仏G1」(10月5日、パリロンシャン)
アロヒアリイを送り込む田中博康調教師(39)=美浦=が夢舞台へ向けての熱い思いを語った。なお、1日に出走馬18頭が決定。2日に馬番、ゲート番、騎乗騎手が確定する。
ホースマンとして強く意識してきた世界最高峰の一戦が、目前に迫ってきた。管理馬
アロヒアリイとともに大一番に臨む田中博師。「今はあまり言わなくなりましたが、個人的な夢であることは変わりません。『凱旋門賞を勝つためにはどうすべきか』を考え、スタッフにも伝えてきました。今は海外・国内G1も含めて挑戦したい舞台が増えましたが、調教師を目指した時からの大きな目標だったのは確か。今こうして挑戦させてもらえるのは、本当にありがたいことです」と万感の思いを胸に決戦に挑む。
師が凱旋門賞の存在を知ったのは四半世紀以上前のことだ。「ジョッキーになる前、ちょうどダビスタの攻略本の表紙がエルコンドルパサー(99年2着)で『そういうレースがあるんだ』と」と当時を回想する。騎手時代にもレースの雰囲気は肌で感じてきた。「実際に間近で携わったのが11年。
ヒルノダムールのチームに加わって調整に参加した時です。昆調教師にはお世話になりました。その後もフランスには何度も行き、1カ月や2カ月滞在してジョッキーとしてのスキルアップや日本との違いを学びました。フランスではジョッキーも馬の世話をする。文化の違いを体験できたことは大きかった」と自らの血肉になっている。
アロヒアリイはオーナーとともにデビュー前から将来を期待してきた好素材だ。弥生賞ディープ記念3着後に早くも凱旋門賞に登録したというニュースは周囲を驚かせた。「面白い挑戦になると思いました。弥生賞は3着でも強さを示す内容。ただ、管理する立場として安易に提案できず…。その上で皐月賞8着という現実を突きつけられ、こちらから行きましょうとは言えませんでしたが、オーナーが背中を押してくれました。出るだけでは意味がありません。見どころがなければ前哨戦だけで帰国する選択肢もありましたし、その覚悟をオーナーと共有できたからこそ遠征が実現したと思います」と参戦に至った経緯を説明する。
前哨戦のギヨームドルナノ賞を見事に逃げ切った。出国までの調整が遅れ、現地でも1週前にコンディションが落ちる時期があり、必ずしも順調ではない状態でつかんだ勝利。「適性を見込んで連れていきましたが、実績的には新馬を勝っただけの身。改めて能力の高さを確認できたのは良かったです。凱旋門賞を強く意識できる瞬間になりました」と手応えをにじませる。
ただ、夢舞台を前にしても決して気負いはない。「
レモンポップの時もそうでした。常に人気を背負っていましたが、“勝たなきゃ”と力まずに自然体で臨んでいました。“勝てるんじゃないか”という欲は慢心につながります。常に疑って準備を重ねる、その姿勢で臨みたい」と足元を見つめる。「厩舎としてもこの2年間で多くの海外挑戦の経験を積ませてもらい、多くを学びました。感情的になったのは
レモンポップのラストランと、
ローシャムパークのBCターフ(2着)くらい。凱旋門賞も冷静に、ただ一つのレースとして全力を尽くしたい」。その先に栄光があると信じ、決戦の瞬間まで愛馬と丁寧に向き合っていく。