◆第104回凱旋門賞・G1(10月5日、仏・パリロンシャン競馬場・芝2400メートル、重)
【パリ(フランス)6日=山下優、カメラ・高橋由二】5日にパリロンシャン競馬場で行われた第104回凱旋門賞・G1で、日本勢の悲願は今年もお預けとなった。最先着は
ビザンチンドリームの5着、日本ダービー馬の
クロワデュノールは14着、
アロヒアリイは16着。勝ったのは地元仏国の3歳牡馬ダリズだった。1週間に及ぶ現地取材で感じた敗因と課題、そして今後への希望を「読み解く」。
発走直前の強い雨。それが今年のアンラッキーを象徴していた。今年の3頭も含め、のべ38頭の日本馬が挑戦した凱旋門賞。今年も勝てなかった。いや、勝たせてくれなかったと言うべきか。1着はダリズ、頭差2着の
ミニーホークから後続を5馬身半離しての決着だったが、3着の
ソジーも含めて上位3頭のゲート番は(2)(1)(3)。やはり内枠でないと厳しかったと思う。
クロワデュノールは大外枠が大きなハンデとなったのは確かで、前に壁をつくれず、息が入らない競馬に。しかし、初の中2週のローテーションで調整が難しかったか。力を出し切れなかったのは確かで、課題を克服して再び強いダービー馬の姿を見せてほしい。
5日のパリロンシャン競馬場は、レース直前まで晴れていたとはいえ、前日の夕方から直前を含め雨が4回降った影響は大きかった。4日はペネトロ
メーター(※)の数値が「3・8」の重馬場だったが、5日は「4・1」まで悪化した。日本の報道陣がコースに入った2日は「3・4」の稍重。日本馬は2日の馬場状態ならという感じはあったが、天候だけは仕方ない。ただでさえ、雨の多いパリ。水はけを改修した
フォルスストレートも、レースではたくさん泥が飛んでいたように、特に効果はなかった。母の父に凱旋門賞2着2回の
オルフェーヴルを持つ
アロヒアリイは道悪で進みが悪く、もまれて道中で接触。厳しい競馬を余儀なくされた。
日本馬で最先着の5着だった
ビザンチンドリームは、軽い走りと切れが持ち味。馬場の悪化に一番苦しむかに思われた。だが、不利な外枠からのスタートでも道中は徹底的に内にこだわり、直線のオープンストレッチを生かす競馬をした。これは出遅れのロスをうまく利用したマーフィー騎手の
ファインプレーだった。フォワ賞を上がり3ハロン33秒09の末脚で差し切ったが、凱旋門賞の上がり3ハロンは36秒19。悪い馬場でも健闘しており、ぜひ来年も挑戦してほしい。
今年の3頭はいずれも前哨戦を制しての挑戦で、現地でも注目を集めていた。23年4着の
スルーセブンシーズ以来、7頭目の掲示板(5着以内)を確保。一時の日本馬の不振から抜け出し、着実に上向いているはずだ。
特に斉藤崇調教師、田中博調教師は落胆していたが2人とも数多くのG1を勝っていて、確かな手腕がある。きっとこのままでは終わらない。今年が14度目の騎乗で、06年に
プライドで2着があるルメール騎手は「日本馬は着実にレベルアップしています。少しの幸運があれば、凱旋門賞でもチャンスはあります」といつも言ってきた。馬場や枠順もいつか、かみ合う時が来るはず。苦労を重ねたぶんだけ、喜びは大きい。このチャレンジに心から敬意を表したい。
(※)1キロの重りが1メートルの高さから落下する衝撃を受けたときの杭の貫入量(単位はミリ)で馬場状態を測定。良馬場は4段階(〜3・2)、稍重は1段階(3・3〜3・4)、重馬場は3段階(3・5〜4・5)、不良馬場は2段階(4・6〜)の10段階で馬場状態を示す。