「菊花賞・G1」(26日、京都)
名伯楽がついにラストクラシックを迎える。来春に定年を迎える現役でただ1人の“1000勝トレーナー”国枝栄調教師(70)=美浦=が、自身が手掛けた3冠牝馬
アパパネの子
アマキヒで菊花賞制覇を狙う。思い入れのある血統で、大恩ある金子真人オーナー(馬主名義は金子真人HD株式会社)の所有馬とともに臨む大一番。決戦を前にした今の胸の内を直撃した。
◇ ◇
-いよいよ最後のクラシック。今の心境は。
「最後のクラシックね。自分に関しては特別に思うところはないし、無事に走ってほしいだけですよ」
-
アマキヒは国枝師が手掛けた
アパパネの子で、オーナーはその母と同じ金子真人氏。
「そのことに関しては感慨深いですね。これまでお世話になった方の馬で最後のクラシックに挑戦できるのはうれしいし、そのなかでも
アパパネの子で挑戦できることもうれしいです」
-
アマキヒは厩舎ゆかりの血統。
「祖母の
ソルティビッドと母の
アパパネを管理させてもらったし、思い入れのある血統です。これまで
アパパネの子は
モクレレ、
アカイトリノムスメ、
バードウォッチャーをやらせてもらって、馬の格好はこの馬が一番いいです」
-金子オーナーとは数々の重賞を制し、G1も9勝を挙げている。
「最初に預かったのがブラックホークで、スプリンターズS(99年)と安田記念(01年)を勝つなど活躍してくれたことで縁ができました。その後に
ピンクカメオ、
アパパネ、
アカイトリノムスメといったG1勝ち馬がうちの厩舎に来てくれました。ブラックホークは私が初めて重賞を勝った馬なんです」
-オーナーはどんな方か。
「すごい人です。オーナーの所有馬は競走成績だけではなく、キングカメハメハやディープインパクトは種牡馬としても成功している。世界を見ても、これほどの人はいないと思います」
-
アマキヒは阿賀野川特別で3勝目を挙げての参戦。この馬の推しポイントは。
「
アパパネの子は、牡馬だとわがままな馬が多い。この馬もそういうところはあるが、いい意味でヤンチャだね。ただ、走る馬はそれくらいの性格がいい。特に牡馬は。能力の高さは感じています」
-
ホープフルSが17着、青葉賞が5着で、3度目の重賞挑戦。
「青葉賞の時点では上位馬との差はあったかな。その差をどこまで詰められるかですね。この馬自身は春と比較して馬体は良くなっているし、気性面に関してもヤンチャなところを残しつつも大人になっています」
-距離の3000メートルについては。
「前走で(戸崎)圭太が乗って長距離適性の手応えをつかんでいた。私も長いところはいいと思う。ムキになって走るわけではないし、スタミナもある。京都コースも悪くないですよ」
-最後に意気込みを。
「競馬はブラッドスポーツと言われているけど、
アマキヒは祖母、母も管理させてもらった馬。人もそうです。縁があってそれがつながって、最後の大きいところを金子オーナーの所有馬で挑むことができる。それはすごくいいですね。その結果として勝つことができれば最高です」
◆国枝栄(くにえだ・さかえ)1955年4月14日生まれ、70歳。岐阜県出身。調教助手を経て89年に調教師免許を取得。90年に美浦トレセンに厩舎を開業した。99年スプリンターズSをブラックホークで勝ち、JRA・G1初制覇。10年には
アパパネで牝馬3冠を達成した。18年に3冠牝馬となった
アーモンドアイは、
ジャパンCや天皇賞・秋、ドバイターフなども勝ち、国内外でG19勝を挙げた。22年には史上15人目のJRA通算1000勝を達成、現役ただ1人の“1000勝トレーナー”でもある。21日現在でJRA通算1112勝、JRA重賞70勝(うちG122勝)。