2005年エリザベス女王杯。大逃げしたオースミハルカ(奥)を差し切ったスイープトウショウ
今年のエリザベス女王杯・G1(11月16日、京都競馬場・芝2200メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・05年の
スイープトウショウ勝利を振り返る。
史上まれにみる“気まぐれ女王”
スイープトウショウ。屈指の瞬発力を武器に、秋華賞、エリザベス女王杯、宝塚記念のG1を3勝。宝塚記念では05年の有馬記念でディープインパクトを負かしたハーツクライすらも完封するなど歴史的にみても最強クラスの牝馬だが、調教拒否、追い切りを完全にボイコットするなどの激しい気性で知られた。07年10月の京都大賞典時には、追い切りを拒否し、体は元気なのに、追い切りを消化できず、出走回避したこともあった。
05年のエリザベス女王杯では、大逃げを打った
オースミハルカを鬼脚で差し切った。直線では、
アドマイヤグルーヴの馬体が進路を阻む致命的な不利もなんのその。そこから外に持ち出すと、かなりの距離があったにもかかわらず、超ド級の末脚で
オースミハルカに半馬身先着した。まともに追えなかった場面があったのに、上がりは3ハロン33秒2だ。
前走の天皇賞・秋では池添が騎乗すると返し馬を“拒否”。ゲートまで鎌田厩務員が引っ張っていくアク
シデントもありゲートにちゃんと入るのかが注目されていた。元調教師の鶴留明雄さんは「装鞍所から馬場に入るのもスムーズにいってくれた。あとはゲートを入ってくれればと思っていたけど、ゲートもうまく入って“よしっ”と声を出したら、他の調教師は皆、笑っていました」と当時、コメントを残していた。
ファンを沸かせた女王は2020年12月5日に世を去った。調教師を定年引退して84歳になった今も元気に過ごす鶴留さんは振り返る。「あのときは遠くのスタンドで見ていて、内と外が離れていたから、ゴールの瞬間は勝ったか分かりませんでした。検量室前に降りても、謙一(池添)が馬の首を
ポンポンと叩いて喜ぶ様子もないので、あれっ? と思っていました。やっぱり勝ったと分かったときは、うれしかったですね。レースの時は自分の馬しか見ていなかったけど、後で見ると、(
オースミハルカと)あんなに離れていて、よく差し切れたと思います。懐かしいですね」。20年が過ぎても、あの名勝負は色あせることはない。